ローリングストーン誌が選ぶ「2018年聴くべき名盤」11選

3. ガウジ・アウェイ『バーント・シュガー』

南フロリダ出身の4ピースバンド、ガウジ・アウェイはハードコアの本拠地、デスウィッシュからリリースしたファーストアルバムで、持っている不満にパンクのノイズをぶつけた。幼稚園の先生から力強いフロントマンに転身したクリスティーナ・ミッシェルが強い信念で数々の社会的問題に対して歌い上げている。『サブトル・スリル』では「Hurt is a commodity(苦痛は有益なものだ)」とバンド全員で繰り返し歌っているがそれは次の曲『ゴースト』の陰鬱なベースラインで一掃されている。ガウジ・アウェイは怒りの勢いで転覆してしまうのではないかと思わせておいて次の瞬間にはバランスを上手くとっているのだ。



4. ルーシャス『ヌーズ』

ブルックリン出身のインディーポップ・バンド、ルーシャスは見過ごされやすいかもしれない。表面的には間に合わせのリリースのために過去にリリースされた曲とカヴァー曲を数曲パッと録っただけのアコースティック・アルバムであるが、それはバンドのジェス・ウルフとホーリー・レッシグがロジャー・ウォーターズのバックアップシンガーとしてツアーに出ていてそれ以上レコーディングに時間を費やすことが出来なかったからなのだ。しかしながら『ヌーズ』ではバンドの魅力的な新しい側面を見ることができる。『テンペスト』や『サムシング・アバウト・ユー』のような元のLP版ではヘヴィ・ロックのバックビートとシンセサイザーに層に埋もれていた曲が目が覚めるようなヴォーカルのショーケースとして生まれ変わっているのだ。テーム・インパラの『イヴェンチュアリー』のカヴァーではウルフとレッシグの声が合わさり美しいハーモニーとなっていて、HBOのテレビドラマ『ガールズ』で使われたシングル『ミリオン・ダラー・シークレット』ではボーカルラインを徐々に強くしていって燃えるようなフィナーレで爆発させている。



5. ガルチャー・ラストワーク『ガルチャー200%』 
 
ニューヨークシティを拠点とするプロデューサー、ガルチャー・ラストワークが『ガルチャー200%』で口数の少ないヒップハウスをさらに完璧なものに近づけた。ベースラインは目立つが短く、メロディーがある曲はそれがゆっくりと形作られていき、ドラムはしっかりと出てくるが出すぎはしない。歌詞は最終的には聞こえてくるが多くは暗号めいていて、ものによっては「I’ll catch you when I catch you … I don’t know when I’ll see you … I know I’m gonna see you. (あなたを捕まえる時あなたを捕まえる…あなたにいつ会えるかはわからない…あなたに会うのはわかっている)」のようにマントラのように歌われる矛盾した言葉の羅列である。その結果多く部分に面白さが感じられグルーヴも決して止まらない。このアルバムはあなたの気分次第でパーティを始めるのにもパーティを上品に締めるのにも使えるだろう。



Translated by Masaaki Yoshida

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