中村佳穂が選んだ2018年の年間ベスト

中村佳穂

Rolling Stone Japanが選ぶ、2019年注目のアーティストに「2018年の年間ベスト」を答えてもらうこのコーナー。今年発表したセカンド・アルバム『AINOU』が絶賛された京都出身のシンガー・ソングライター、中村佳穂によるセレクトをコメント付きで紹介。

※「BEST OF 2018」記事一覧はこちら

◎ベスト・アルバム

●チリー・ゴンザレス『ソロ・ピアノIII』

『AINOU』を作り始めると、作り始めに聴いていた曲しか身体に馴染まなくて、結構2017年やもっと前のものしか聴かなかったのですが、唯一今年のもので「聴ききれた」と思えたのがチリー・ゴンザレスのこれ。京都シネマで彼の映画をやっていてふと観に行ったのがきっかけだったのですが、まあ本人の話している事より、ピアノが随分と本音を言っている様で笑ってしまった。少し狭い部屋で二人きりの気分になれるのが、私の制作の痺れを癒してくれていた気がします。



●yatchi『第3区間ピアノ』

同上という感じですが、今年は情報の少ないピアノ作品を好んで聴いていた気がします。京都のムーズムズというバンドのキーボード、yatchiさんのソロ作品。

ピアノソロってオーガニックな人が多い印象ですが、yatchiさんはちょっとストリート系のデザイナーとか言われても違和感がない感じで、いつもキャップを被って、チノパンか、トレーナーで、坊主頭で、シャイで、おもむろにピアノに向かうと背中をぐグっと丸めて、アップライトピアノの蓋を外してハンマーと弦の間に自前の布を挟んで、淡々と弾く。そのフレーズと言ったら! 前作も大好きで良く聴いています。いつどこで聴いても変わらず美しくユーモラス。そのチグハグさのそれが、(本人と)会った時の印象とどことなく一緒なのも本当に大好き。




◎ベスト・ソング

●中村佳穂「そのいのち」

はい。私です。へへ。今年一番聴いたのが紛う事なき『AINOU』だったので、選ばせていただきました。この数年急に洋楽が身体に馴染んできて、音像に感動する様になったんです。英語はわからない。何を意味は分からない、けど美しい。今まで歌詞は「意味がわからないといけない」と思っていたのですが、今こういう気持ちなのなら、日本語で何を言っているか分からなくても、むしろ分からない方がいいのではと思って、言葉を崩して意味をなくして構成しました。

もちろん「意味のない歌」なんて変な話だし、出来上がりは不安だったのですが、最後みんなで完成したものを聴いた時、ドワッと金の稲穂が風になびく姿が見えた様な気がしたのも初めての経験で、大丈夫なんだと驚き感動したのを覚えています。嬉しかった。




◎ベスト・アーティスト

●ジェイコブ・コリアー

先日のラジオでスタッフの人に新作が出たのを教えてもらったのですが「こりゃあ凄い! ありえんじゃん!」と身体が今年一番熱くなりました。

完全に余計なお世話なのですが、最初数百トラック重ねて作品を作っている姿を動画で見た時、素晴らしさに驚くと同時に「才能がありすぎで世の中がついていけるのか」と思っていました。このまま行けば、凄いついていけない才能って周りに思われて、音が孤立したりするのだろうかと思っていたら今作が出てて。ああ、周りの愛で彼はどこまでもいけるんだなぁ。と思いました。

なんというか彼の繊細な誰も見た事ない宮殿に、みんなが「僕の音を好きに使ってくれ」と手を貸してくれている様に聴こえたんです(ローラ・マヴーラと一緒にやっている奴とか最高)。

ホッとしたのと同時に、途方もないな、はあ、会いたいな、と思いました。素晴らしい才能を目の当たりにしたい。そして「あはは!圧巻だ!」とか言いながら彼と仲良くなりたい。それまで彼に面白う奴だと思ってもらえる様に、想像を絶やさず私も頑張ります!






〈リリース情報〉


『AINOU』
発売中

〈ライブ情報〉

「音楽感謝 vol.14」
2019年1月13日(日)京都・拾得

「月のひなた7周年企画<ツキノポリタン>」
2019年1月20日(日)名古屋・得三

GRAPEVINE「ALL THE LIGHT」対バンツアー
2019年2月21日(木)名古屋・CLUB QUATTRO
2019年2月22日(金)大阪・BIGCAT
2019年3月1日(金)東京・マイナビBLITZ赤坂

「帰ってきたエフエックス」
2018年3月24日(日)福岡・Zepp Fukuoka

ライブ詳細:http://nanos.jp/nakamurakaho/blog/1/



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