ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・アルバム」トップ50

15位 J.バルヴィン『ヴィブラス』
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2015年作「Energía」でレゲトンの未来を切り拓いたJ.バルヴィンは、ボーダレスで壮大な本作『ヴィブラス』でメインストリームの最前線に躍り出た。コロンビア出身のシンガーの大ブレイクが、「デスパシート」で火が点いたラテン・ポップの人気を不動のものにしてみせたことは、科学的実験、そして非欧米圏のアーティストが活躍するプラットフォームの確立という意味でも大きな意味を持っている。まるでカメレオンのように、バルヴィンは自身のカラーをめまぐるしく変化させる。若きプロデューサーSky Rompiendo、そしてレゲトン界の重鎮Marco “Tainy” Masísと共に、バルヴィンはダンスホールやアフロビート、そしてエレクトロ・ポップを違和感なく融合させてみせた。どうカテゴライズされようと、どこまで上り詰めようと、バルヴィンが自身に課した使命が揺らぐことはない。それは彼にとって初のトップ10シングルとなった「ミ・ヘンテ」ではっきりと明言されている。「俺の音楽はあらゆる人々に向けられている」

14位 ミツキ『ビー・ザ・カウボーイ』
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胸に抱えた痛みを生々しく描いた2014年作『Bury Me at Makeout Creek』と2016年作『ピューバティー2』の2作で、ミツキはインディー・アイコンとしての地位を確立してみせた。しかし本作『ビー・ザ・カウボーイ』で、彼女はオルタナロックのカタルシスを放棄し、ディスコやグラムロック、カントリー、そして劇中歌といったスタイルに挑戦してみせた。わずか2分間の傑作「Washing Machine Heart」、「Lonesome Love」、「Me and My Husband」といった楽曲群では、彼女が頭の中で作り上げた架空の人生が描かれる。収録曲の大半のフックがそうであるように、「Nobody」のコーラスではそのタイトルが延々と繰り返される。それはまるで、彼女の音楽が持つ底知れぬ深さを表現しているかのようだ。

13位 ジャネール・モネイ『ダーティ・コンピューター』
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ラディカルに形を変え続けるファンクポップという、プリンスが確立したスタイルの継承者たるモネイは、政治的メッセージ性とパーティの開放感を同居させた傑作を完成させてみせた。ベテラン勢(ブライアン・ウィルソン、スティーヴィー・ワンダー等)からコンテンポラリーなアーティスト(ファレル、グライムス等)まで、本作には経験豊富なゲストたちが多数参加しているが、主役はあくまで怒りに満ち、喜びに溢れ、セクシーで、クイアの黒人女性としての誇りとフェミニズムを主張するモネイ自身だ。「ジャンゴ・ジェーン」では恐るべきラップスキルでファンの度肝を抜き、最終曲の「アメリカンズ」では大統領選以来広がり続ける国民間の溝を埋めようと呼びかける。かつてなく分断と対立が目立った2018年において、本作はポップ・ミュージックの真価と可能性を提示してみせた。

Translated by Masaaki Yoshida

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