ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・アルバム」トップ50

18位 ヴィンス・ステイプルズ『FM!』
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投げやりというよりも直感的という表現がふさわしい『FM!』は、わずか22分間というステイプルズのキャリア史上最短のレコードではあるが、彼は本作で野心に満ちた前作『ビッグ・フィッシュ・セオリー』とは大きく異なる方向性を示してみせた。変化球的なビートを選ぶことでその卓越したラップスキルを証明してみせた前作に対し、『FM!』ではリスナーの体を揺らせることを重視している。よりスタンダードな方向性といえるが、ステイプルズは圧倒的スキルで見事にビートを乗りこなし、ファンの期待に応えてみせた。ギャングの日常をメランコリックかつユーモラスに描くというスタイルはそのままに、彼ならではのジョークが以前にも増して冴え渡っている。

17位 ルーシー・ダッカス『Historian』
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リッチモンド出身のシンガーソングライター、ルーシー・ダッカスは今年2枚の秀作を発表した。1枚はボーイジーニアス(ジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリッジャーズと共に結成したスーパーグループ)のデビューEP、もう片方は自身の2作目となる本作だ。生々しいヴァースはそのままに、彼女は繊細かつ卓越した技術をもって静と動を行き来する。ストリングスとブラスセクションのゴージャスなアレンジは、ヴォーカルが伝える感情を一層リアルにしている。彼女は声を張り上げることなくメッセージを届けることができるが、「Pillar of Truth」における彼女の「魂の叫び」はリスナーを圧倒する。

16位 サッカー・マミー 『クリーン』
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ナッシュビル出身のインディ・クイーン、ソフィー・アリソンによる大胆なムードと音楽性が魅力のデビューアルバムは、本年度最大のスリーパーヒットだった。自身の価値観をはっきりと打ち出していた過去の作品群はBandcampで大きな支持を獲得したが、『クリーン』で彼女はソングライターとして大きく飛躍してみせた。「Your Dog」「Last Girl」等のアップテンポな曲が現実の厳しさを描く一方で、「Still Clean」や「Flaw」、「Blossom (Wasting All My Time)」といったバラード群は、聞き手の感情を激しく揺さぶってみせる。

Translated by Masaaki Yoshida

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