2018年の「英米クロスオーバー現象」の先駆け ポスト・FKAツイッグス的存在から、ネイオが世界的に羽ばたこうとしている理由

ネイオ(Photo by Joseph Okpako/WireImage)

2018年の音楽シーンにおいてもっとも注目すべき事象のひとつは、イギリス出身の女性R&Bシンガーたちのアメリカでのブレイクだ。これまで「イギリスのR&Bはアメリカでは売れない」と言われてきたが、90年代R&B調の「ブード・アップ」とデビューアルバムで全米5位に輝いたエラ・メイや、ドレイクやケンドリック・ラマーにフックアップされてアメリカでも確かなファンベースを築いているジョルジャ・スミスなどの台頭で、従来の常識は覆されつつある。そして、そのような時代の変化の先駆けと言える存在が、このネイオだ。

彼女が大きな注目を浴びる契機となったのが、2015年にリリースしたセカンドEP『フェブラリー15』。ネイオ本人が「ウォンキー・ファンク(奇妙なファンク)」と呼ぶ、90年代R&Bとベース・ミュージック以降のUKクラブ・ミュージックを衝突させたようなサウンドの衝撃は、瞬く間に大西洋の向こうまで伝わった。アメリカでもっとも求心力がある音楽ネット・メディアのピッチフォークは、このEPに8.4点という高得点でベスト・ニュー・ミュージックの称号を与えている。

Nao - February 15 EP



大きな反響を巻き起こした初期EP、そして翌年に送り出したデビューアルバム『フォー・オール・ウィ・ノウ』のヴィジョンについて、ネイオはこのように語っている。

「ここ最近の音楽を聴いていて、ソウルが損なわれていると感じたから、オルタナティヴとポップの世界を融合させようとしていたんだと思う。ポップ・ミュージックにソウルを取り戻したくて。『フォー・オール・ウィ・ノウ』では、様々なジャンルを取り入れて、そういったことをしようとした。ポップ、ファンク、R&B、ディアンジェロっぽいスタイルのソウル、それらを全部合わせてみたらどうなるんだろう?って思って。だから、『フォー・オール・ウィ・ノウ』は、私が好きな音楽と今まで辿ってきた音楽の道の過程をすべて表現するものだったと捉えてる」

初期作品群の成功は、彼女をある夢のような体験に導いた。それはボン・イヴェールとの共演である。ネイオにとってボン・イヴェールとは、「ティーンエイジャーの頃から20代にかけて、彼らの音楽は私のサウンドトラック的な存在だったの。私の人生の一部分だった」とまで言うヒーローだが、世界屈指の音楽フェス、コーチェラのステージでゲスト出演のオファーが舞い込んだのだ。

「2017年のコーチェラで、『一緒にパフォーマンスしない?』って彼らから言われた時は信じられなかった。『どの曲を選んでもいい』って言われたから、そこで“Michicant”を選んだのよね。これが、私にとってボン・イヴェールのフェイヴァリット・ソングだったから。コーチェラのショーで、1万人の前で一緒にこの曲を歌ったのよ。あれは私にとっても、本当に美しい瞬間だった」

こうした輝かしい体験を経て、2018年10月に送り出された新作が『サターン』である。このアルバムでは、ネイオの持ち味であるイギリス音楽のエッセンスに加え、現代最高峰のラッパー、ケンドリック・ラマーからもインスピレーションを得ていることを明らかにしている。

「ケンドリック・ラマーは、私のオールタイム・フェイヴァリット・アーティスト。私はヒップホップ好きだし、男兄弟が3人いるから、家でもヒップホップはよくかかってたの。彼は声にいろいろなカラーやキャラクターを持っていて、声で探求しているところが好き。だから、私も今回のアルバムで試してみたの」

と同時に、この『サターン』では、ネイオが29~30歳という節目の年齢を迎えるにあたって、自分の人生の様々な側面を改めて見つめ直したことが重要なモチーフのひとつになっている。

「サターン・リターンズっていう占星術の考え方があって。土星は成長とか学習の惑星なんだけど、27年から32年かけて一周するらしいの。だから、27年ぐらい生きていると、その人の人生に何か大きな事柄が起こるって考えられている。実際、私はそういったことを経験していたし、周りの友達も経験していた。別れであったり、仕事の方向性が変わったり、長年何かに向かって頑張っていたんだけど、それがキャリアとして上手くいかなくて、方向性を変えざるを得なかったり……。このアルバムは、そういった『変わること』(Change)を題材にしているの」

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