「アデルとエド・シーランの英国」を終わらせたデュア・リパは何故「timesup時代の愛の戦士」と呼ばれるのか?

デュア・リパ(Photo by Joseph Okpako/WireImage)

アデルやエド・シーランといったメガ・ポップ・スターを除けば、2010年代は完全にワールドワイドな求心力を失っていたイギリスのポップ・ミュージック。しかし、新世代の台頭によって風向きは確実に変わりつつある。その先陣を切っているのが、「2018年最大のシンデレラ・ストーリー」と言われるエラ・メイと、本稿の主役、アルバニア人の両親を持つロンドン出身のデュア・リパだ。

デュア・リパを世界的なポップ・スターへと一気に押し上げたのが、2018年11月現在までに15億回以上もMVが再生されている大ヒット曲「ニュー・ルールズ」。このビデオがヴァイラルした理由は、女性同士の連帯によって男性/恋愛依存を乗り越えるというメッセージが支持を集めたからだろう。まさにこれは、metooやtimesupの時代を象徴するポップ・アンセムである。

Dua Lipa - New Rules



彼女のキャリアの出発点は、15歳のとき、YouTubeにカバー曲を歌う動画をアップし始めたこと。それがきっかけでラナ・デル・レイなどを手掛けるマネージャーのベン・モーソンと知り合い、契約した翌日にはスタジオ入りしていた。

当初からリパがイメージしていた自分の音楽とは、ポップスとヒップホップという同じくらい大好きな2つのジャンルの影響を反映させたもの。しかし、この組み合わせの奇妙さはセッションに参加したソングライターたちを動揺させたという。リパはローリングストーン誌のインタビューで、当時をこのように振り返っている。

「スタジオに入って『ネリー・ファータドとJ.コールみたいなサウンドがいい』と言ったら、みんな『何だって!?』って」

そんなリパが「自分の音楽」を見つけられたという手応えを感じたのが、2016年5月にリリースされ、イギリスでゴールド・ディスクを獲得した初のヒット曲「ホッター・ザン・ヘル」だ。

Dua Lipa - Hotter Than Hell



この曲ができた背景について、リパはこのように説明する。

「当時、かなりキツい別れを経験していて。私に自分はダメだと思い込ませる人だったの。でもこの曲を作りながら、彼の方が私を理解できないって内容にしたかった。その曲は良い仕上がりだったけど、コーラスが完成していなくて。だから『これはゴミ箱行き』ってみんな思ってたんだけど。そんなとき、Tumblrをスクロールしていたら、黒の背景に赤文字で『Hotter than Hell』って書いてあるのを見つけたの。『これ、クールじゃない!』って思って。もし彼が私を地獄よりも熱いと思っていて、私は彼を欲しくないとなったらどうかな? って」

ローリングストーン誌は、この曲で確立されたリパの個性について、以下のように評した。

「この曲が愛の戦士というイメージを彼女に重ね、その姿がファンに受け入れられることになる。彼女の歌詞には儚さと憧憬が散在するが、最優先する空気感は、たわ言は信じない、断固として立ち向かう、というものだ」

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