SKY-HIのライブに見た「越境者」の姿

そして、気が付けば金子ノブアキもMIYAVIも越境者だ。ジャンルも国境も超えて活躍している。しかもそのプレイは誰かの真似ではない、唯一無二のスタイル。そんな3人によるプレイが普通であるはずがない。3人での演奏の締めは「Double Down」。そのプレイの凄さは予想の範囲を超えた内容になった。その証拠に金子ノブアキとMIYAVIが去った後も、オーディエンスからざわつきの声が消えることがなかった。


Photo by 畑 聡

オーディエンスがまだざわついている中、彼がMCを放つ。「だから言ったろ! 俺がヤバイことになるって言った時は、本当にヤバイことになるんだって!!!」と。「セッションって会話だから。会話をしてると、素の自分が出てきたりするんだけど、今のセッションでは、あっくんもMIYAVIも掴めないリズムをひたすら探してた(笑)」と興奮を隠しきれないMCを挟み、トラックメーカー・mabanuaとキーボードプレイヤー・Kan Sanoを呼び込み「リインカーネーション」を披露。

金子ノブアキ×MIYAVIとのセッションで完全にスイッチが入った彼のパフォーマンスを凄かった。無重力状態のように言葉がフローし続けている。このmabanuaとKan Sanoを入れてのパートでは、トラブルが発生したが、そこも即興のラップで完全に埋めた。そしてmabanuaとKan Sanoとのジャムセッションのパートで披露した即興のラップはあらゆるジャンルを越境したものだった。

今さらだが……彼の名前はSKY-HI。「越境」を使命としたような名前だなぁとこの日つくづく感じた。でも、その少し後に披露された「Marble」という曲を聴いて考えが変わった。“We got it, black, white, yellow, red and blue・You know there ain’t no need to fight Listen, we don’t need to choose・・・どれもとても綺麗 汚し合うなんて馬鹿馬鹿しい”というフレーズがあるように「Marble」で謳われているのは境を超えることではなく、境を取り除くことだ。「Marble」は「越境」ではなく「徐境」でもいうべき世界だ。境を越えているだけでは、次に来る人達は境にまたぶつかってしまう。SKY-HIは、世界中にある境という境を取り除こうとしているのかもしれない。

最後の曲「カミツレベルベット」でSKY-HIが予期せぬ涙を流した。何度かインタビューをしたことがあるが、ステージではエモいSKY-HIだが、実はいろんなことをしっかりと計算してやっているクールでプロフェッショナルな男だ。だから、ステージの上で泣くということは絶対と言っていいほどしない。そのSKY-HIが泣いた。決して自分のライブに酔ったわけではない。この日のライブで何か大きな境を取り除くことが出来たと感じから涙が出たのだろう。そして、その涙する姿に拍手が起きた。

SKY-HIの行道は常に険しいが、境を取り除き、道を拓くその姿はどこまでも気高く美しい。ライブ翌日、12月12日はSKI-HIの32回目の誕生日にして2年ぶり4作目のアルバム『JAPRISON』のリリース日。この新しい作品でまた一つ世界の境を取り除くのだろう。

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