いかにして無名の英国シンガー、エラ・メイは北米ポップ・シーンの頂点に立ったのか?

2018年12月9日、スティーヴィー・ワンダー主宰のベネフィット・コンサートでワンダーと共演するエラ・メイ(Photo by Lester Cohen/Getty Images for Wonder Productions, Inc.)

2018年の音楽シーンにおける最大の事件のひとつは、イギリス出身の女性R&Bシンガー、エラ・メイの大ブレイクだ。

90年代調のクラシックなR&Bソング「ブード・アップ」は、全米シングル・チャートで最高5位を記録。SZAやティナーシェなど、並み居る強豪のヒット曲の最高位よりも上位に駆け上っている。そして、米ビルボードのヒップホップ/R&Bエアプレイ・チャートでは16週にわたって1位をキープ。これは、ドレイク「ホットライン・ブリング」、メアリー・J・ブライジ「ビー・ウィズアウト・ユー」の15週を抜いて、歴代2位という大記録だ(1位はミゲル「アドーン」)。ローリングストーン誌が言うように、この曲は「過去10年にブレイクした女性R&Bシンガーの中でもっとも成功したシングルのひとつ」なのである。


Ella Mai / Boo’d Up

「ブード・アップ」を取り巻く熱狂がどれだけすさまじいかは、ローリングストーン誌が報じたこのようなエピソードからも窺えるだろう。

「この夏、スティーヴィー・ワンダーがエラ・メイに電話をかけてきて、彼がどれほど“ブード・アップ”が大好きかということを伝えてきた。しかもスティーヴィは電話で“ブード・アップ”のフックを歌ったのだ。『もう常軌を逸してるでしょ』とエラは言う」

イギリス出身のR&Bシンガーが、北米メインストリームでこれほどのセンセーションを巻き起こすのはあまり前例がない。この「事件」は一体どのように始まったのか? ローリングストーン誌はその経緯を以下のように伝えている。

「エラ・メイは、友達と組んだガール・グループ、アライズ(Arize)のメンバーとして、2014年にワン・ダイレクションやレオナ・ルイスを発掘したTV番組『Xファクター』のイギリス版に出演した。しかし、それが上手くいかなかったので、彼女はソロに転向し、ポップ・ソングの15秒のカバーをInstagramに投稿し始めたのである」

「そこで披露していたフェティ・ワップ“679”のカバーが人気ゴシップ・アカウント(@TheShadeRoom)にピックアップされた。『彼らにリポストされたのがきっかけで、いろんな人が私のページに“これも歌える? あれも歌える?”って書き込むようになって』とエラは回想する。『で、私は思ったの。“これでどこまで行けるかわからないけど、というか、これでどこかに辿り着けるかさえわからないけど、やり続けなきゃ”って』」

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