ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ジャズ・アルバム」トップ20

10位 ヒューストン・パーソン、ロン・カーター『Remember Love』

有名シンガーのエタ・ジョーンズやソウル・ジャズの大御所リチャード・“グルーヴ”・ホームズらの共演者として名の知られたテナー・サクソフォニストのヒューストン・パーソンは、50年以上に渡り、ジャンルを超えて活躍を続けてきた。本作で彼は、彼と同様に幅広くかつ長く活躍してきた数少ないミュージシャンのひとりと共演した。80歳代になる世界記録保持者でスーパーベーシストのロン・カーターは、パーソンとは数十年来のデュオ・パートナーだ。本作には、「ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」から「今宵の君は」までお馴染みの曲が収録されている。パーソンの温かみのある伝統的なトーンが、カーターの絶妙なスウィング・ラインの上に漂う。本作はオールドファッションにカテゴリーされるだろうが、2人の巨匠の手にかかると、全く古臭さが感じられない。



9位 レイ・アングリー『One』

キーボーディストのレイ・アングリーは、ミック・ジャガー、ディオンヌ・ワーウィック、クリスティーナ・アギレラ、ザ・ルーツらあらゆるアーティストと共演してきた、長年に渡り第一線で活躍するミュージシャンのひとりだ。サイドマンとして20年以上のキャリアを誇る彼だが、2018年9月に初めてリーダーとしてのデビュー・アルバムをリリースし、同年の最も予想を超えたジャズの名盤となった。アンブローズ・アキンムシーレ(トランペット)、マイロン・ウォルデン(サックス)、デリック・ホッジ(Ba)、エリック・ハーランド(Dr)ら有名スターを迎えたアングリーは、ソングフルなリリシズム、ストラット・ファンク、動きのあるポスト・バップ、極めて優美なビョークのトリビュートなど、目のくらむほど強烈なコンセプトを示した。我々が長年待ち望んだ作品をついに手にできたのだ。



8位 ダン・ワイス『Starebaby』

これはジャズ・アルバムと言えるだろうか? ある意味、答えは“ノー”だ。全体的にインプロヴィゼーションというよりも、敏捷なテクニックと優れたイマジネーションを兼ね備えたドラマー&コンポーザーによる、ジャンルを超越して作り込まれた組曲といえる。ドゥームメタルからデヴィッド・リンチまで幅広いジャンルからインスパイアされた、ダークで激しくダイナミックなワイスの最新作をこなせるのは、エリート・ジャズ・ミュージシャンしかいないだろう。音楽の骨格はワイスによるものだが、錚々たるプレイヤーによる心地よいテクスチャーによって肉付けされている。ポイズンガスのギターを披露するベン・モンダーは、デヴィッド・ボウイの『★』でもプレイしている。さらに、驚異のSF的なキーボードの先駆者であるクレイグ・テイボーンとマット・ミッチェル。そして、ミスター・バングル、ファントマス、メルヴィンズ等のバンドとの共演でも知られ、不穏に響くベースを聴かせるトレヴァー・ダンらが参加している。ドラマーのワイスによるユニークなヴィジョンと相まって、ユニークな音を生み出すアルバムの最後を飾る「Episode 8」は狂気のサーカス・プログレッシヴで、リスナーの心に映画のような現実を見せてくれる。



7位 ヴァリアス・アーティスト『We Out Here』

コンピレーション・アルバムは、とかく思い付きで製作されたもののように思われがちだ。しかし本作は、はっきりとした目標をもって作られていることがわかる。本作には、ジャズを若々しくダンサブルかつ新しいものとして世界からの注目を集めさせたロンドンのシーンが詰め込まれている。最も印象的なのは、マイシャによるポスト・コルトレーンのユニークな解釈から、テオン・クロスのノリの良いチューバ・ファンク、モーゼス・ボイド・アンサンブルによるクラブ向きのエレクトロ・ジャズ・グルーヴに至る幅広いエクレクティシズムと、主要参加アーティストによるさまざまなアンサンブルだ。アルバムには、ヌビア・ガルシア(サックス&フルート)、ジョー・アーモン=ジョーンズ(ピアノ)、シャバカ・ハッチングス(マルチインストゥルメント)らが参加している。共演者を仕切るハッチングスは2018年、自身のバンドであるサンズ・オブ・ケメットを率いてインパルス!レコードからデビューしている。本作は、プロのアンサンブルによるミックステープの形式を取った共通のセルフポートレートといえる。


Translated by Smokva Tokyo

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