テクノロジーの進化で見えてきた「エンターテインメントの未来」

スポーツの生中継権をめぐる熾烈な争い
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Banc of California Stadiumでのゲンナディ・”GGG”・ゴロフキンとのマッチ直前、メディアの前で公開スパーリングを行ったカネロ・アルバレス  2018年8月26日  カリフォルニア州ロサンゼルス(Photo by Harry How/Getty Images)

NFL、NHL、NBA、そしてMLBの放映権契約が終了する2025年までには、ケーブルテレビは完全に姿を消すだろう。スポーツストリーミングで楽しむという考えが定着するのはもはや時間の問題だと思われるが、各企業は同分野への投資については慎重な姿勢を見せている。10月にはDAZNがカネロ・アルバレスの11試合の放送権を3億6500万ポンドで買い取ったというニュースが流れたが、ケーブルテレビ各社が各種スポーツの放映権獲得に払っていただけの金額を、ストリーミング大手企業が用意するかどうかは疑問視されている(NetflixのCEOを務めるリード・ヘイスティングスは、同社がスポーツの生中継には関与しないという意向を明らかにしている)。その一方で、2018年にはFacebook WatchがMLBの水曜午後の試合の独占放送権を獲得した。メジャーなスポーツリーグの試合がストリーミング限定で放送されるという前例のない状況が生まれたことで、スポーツとストリーミングという組み合わせは定着に向けて大きく前進したといえる。あるMLBの関係者はその試みから多くを学んだとしており、中でも「画面上のスコアボードが大きすぎて目障り」といった、ユーザーからのフィードバックは非常に参考になったと語った。またその試みは40歳以下の視聴者の関心を引くことに成功し、若いファンの獲得に苦労していたチームにとっては大きなプラス材料となった。ー Michael Weinreb

ロボットはより優れたヒット曲を生み出せるのか?
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そう遠くない未来に、人工知能がエド・シーランを凌ぐヒット曲を生み出す日が来るかもしれない。現時点では夢物語に近い発想だが、人工知能を駆使したソングライティングへの関心は急速に高まりつつある。Amper、Popgun、Jukedeck、Amadeus Code等、アーティストの作曲作業を補助する人工知能開発に取り組むスタートアップ各社は、すでにベンチャー・キャピタルから巨額の投資を受けている。Flow Machinesと呼ばれる作曲アルゴリズムを駆使して生まれた曲の中には、SpotifyのNew Music Fridayプレイリストに加わったものもある。

そのアルゴリズムは特定のジャンルの何千という楽曲を解析し、瞬時にしてスタイルに合ったコード進行とメロディを生み出す。そうして完成した楽曲は、人の手によって作られた曲との識別はほぼ不可能だという(異なるアルゴリズムの解析結果に基づいた結論だが)。現在のシーンにおけるトレンドとなっているわけではないものの、例えば何ヶ月にもわたるツアーにより疲れ切っているミュージシャンと比較した場合、作業効率の面ではこういったプログラムに分があるに違いない。また作曲家に一銭も支払うことなくヒット曲を生み出すことができるというアイディアは、レコード会社やストリーミングサービスにとっては魅力的であるはずだ。事実Spotifyは2017年に、架空のアーティストの楽曲を複数のプレイリストに入れていたとして非難を浴びた。同社が人工知能を活用して生み出した曲を、実際には存在しないアーティストの曲として発表していたという事実は人々の反感を買ったが、開発側の人間の多くは人工知能の発達がアーティストを淘汰するとは考えていない。彼らの目的は楽曲のアレンジ等に活用することができる、アーティストの作曲活動を補助するアルゴリズムの開発だという。それは無から何かを生み出すものではなく、あくまで人間の想像力を促進するために存在するAmadeus Codeの創設者である福山泰史は、エレキギターとドラムマシンを例に挙げつつこう語る。「テクノロジーの進化がアートの発展につながることは、歴史がすでに証明しています。人工知能を駆使する優れた作曲家たちがシーンを担うようになることは、もはや時間の問題なのです」ー Cherie Hu



Translated by Masaaki Yoshida

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