SKY-HIの2018年総括「アジアから置き去りにされた日本と、閉塞感を救った音楽の力」

SKY-HI(Photo by Masato Moriyama)



―さっき仰ってた文化的閉塞感に対して、精神的な閉塞感というのは具体的にはどういったものですか?

SKY-HI:芸能とか音楽やっている人にはあるあるだけど、炎上しないようにしないといけない、叩かれないようにしないといけないとか。そういうのが昔から日本では強くて。そこから外れたものはいくらでも叩いていいっていう状況が、精神的な閉塞感をもたらしていると思います。

―例えば、政治的な発言をすると叩かれるからやらないというのが日本のポップの型にはまった在り方だとして。SKY-HIさんは今回の『JAPARISON』や『FREE TOKYO』、過去には「キョウボウザイ」など、クリティカルな表現を続けている点において日本にはなかなかいないミュージシャンだと思います。ただ、それに続く動きが出てきていない気もしていて。

SKY-HI:ポリティカルなものとかクリティックはイヤなんですよ。本当はやりたくない。マジでそういうのがない世界になってほしいとは思ってるんだけど。20年前、俺が小学校高学年くらいの時って、バブルが弾けて不況が続いて「日本ヤバいじゃん」みたいな空気があった。その頃は、シニカルな風刺でそういう状況を歌って奥田民生さんが売れるとか、若い奴もキヨシロー(忌野清志郎)に熱狂するとかっていうのがあったと思う。でも、今はそれがシャレにならなくなってきてる。シャレにならなくなると何がヤバいかって、全部正解じゃないといけない、みたいな。

―右か左か、白か黒か。二者択一を迫られる状況が強まっている感覚はありますね。

SKY-HI:でも、絶対的な正解って、本当はもう存在しないじゃないですか。だから、色々な問題に対してそれぞれが会話し続けなくちゃいけない。トランプにしたって、こっちからするとレイシズムの塊で悪の権化にしか見えないけど、アメリカの内側には彼の打ち出す経済政策に魅力を感じている人が一定数いるのは事実なんだから、それならどうするのかっていう会話を続けるしかない。でも、今の日本はもう教育の段階で批判精神が育たない状況になってしまっている。だから、会話自体が生まれないんですよね。批判そのものが悪いものだと思ってしまっている状況っていうのが一番ヤバい。「批判なき政治」って言ってる議員もいましたけど、それって要するにファシズムですからね。政治的なテーマを言う必要もないし、クリティックを考える必要もないけど、話をするってことをしないと無味無臭なものになっていってしまう。そりゃ、日本のポップスだけつまらなくなるよって話で。



―『FREE TOKYO』も、ポリティカルなメッセージを訴えるというよりも対話を促そうとしている作品でしたしね。SKY-HIさんがそうした閉塞感から『JAPRISON』で抜け出せたのには、どういうきっかけがあったんですか?


SKY-HI:今は抜け出したと思う瞬間が本当に多いんですけど、一番大きかったのは「New Verse」が作れたこと。この曲のクレジットを見てもらうと、“元天才”って変なのが入ってますけど、これってぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)なんです。ここ一年くらい、花火したりとかよく遊んでいたんですよ。

―へぇ。

SKY-HI:それで、アルバム制作の初期に取り掛かっていた「Blue Monday」や「White Lily」を聴いてもらったら、「前作と違う方向に振り切れてない、もっと自分と向き合った方がいい」とか、(電話越しに)ガンガンにディスってきやがって。それで、お互い口喧嘩をするという(笑)。しかも、ありがた腹立つことに、アイツめちゃくちゃしっかり聴いてるんですよ。

―だからこそ、痛いところを突かれると。

SKY-HI:そんな感じで朝方に電話を切って、そのまま寝て、翌日に「New Verse」の2ヴァース目を考えてたんですけど、ぼくりりとの口喧嘩によって自分と向き合えていたんでしょうね。スタジオに入って、フロウも何もない状態でリリックをそのまま録ったら、「うわ、これやばい!」って。「早く家帰って聴かないと泣く」みたいな(笑)。

―「照明の落ちたブースがやけに落ち着くのは自分と会話するツールだからさ」というフレーズもあるように、そうやって自分と向き合ったことで、勇気付けられるリリックとブレイクスルーしていく感覚が生まれたんですね。

SKY-HI:「New Verse」では自分の中の戦争に目を向けているんだけど、それはいまだに何も解決してないんですよ。今でも小さな内戦は起こってるんだけど、それにちゃんと目を向けて何とかしようとした瞬間に、何か救われたんです。「まさか自分の曲にこんなに救われるなんて」っていう気持ちが生まれてきた。自分の傷口とか痛い部分って誰にも触れられたくないし、まして自分で触れるなんておぞましくてやりたくないんだけど、そういう傷口を自ら抉るような行為をした時にだけ手に入る鍵みたいなものがあった。だから、閉塞感を破る鍵はそこにあるのかなっていう気がしていて。文化的閉塞感はこれからもっと頑張らないといけないけど、若いリスナーが精神的に抱えている閉塞感を変える力は持てたんじゃないかという観測を自分ではしています。

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