ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・メタル・アルバム」トップ20

14位 ヨブ『アワー・ロー・ハート』

オレゴン州ユージーン出身のバンド、ヨブはこのジャンルのスローなノリに、高揚するようなメロディと宇宙的な空気感とリーダーであるマイク・シャイトの実存的な唸り声でドリーム・ポップ版ディオのようなサウンドを加え、常にドゥームメタルの飾り気のない慣例を覆してきた。『アワー・ロー・ハート』はイェスーやアイシス、ペリカンのような2000年代中盤のバンドのサウンドを詰め合わせたようなものになっていて、アルバムが終わる頃までには少しグレン・ブランカのギターシンフォニーっぽくすら聞こえてくる。結腸破裂と発作とブドウ球菌感染症の療養中に、文字通り病院のベッドの上で書かれたアワー・ロー・ハートは決してベルイマンの映画のようなものではない。むしろ溢れ出る自己肯定感と心地良い夏の死に際の記録なのである。



13位 ポータル『イオン』

ポータルのヴィジュアル面のこだわりは普通ではない。ブリスベン出身のこのバンドのメンバー達はローブ、マスク、ヌースを、ヴォーカリストのザ・キュレーターにいたってはローマ法王の司教冠や装飾を凝った大時計など、様々な奇妙な被り物を身にまといステージに上がるのだ。信じがたいことに彼らの音楽はさらに変わっている。怒れるハチの群れが激しく衝突するようなギター、よろめきと突進を繰り返すドラム、怒れる神の狂気のような荒々しいヴォーカル。ポータルの5枚目のフルアルバムはこれまででもっともクリアにレコーディングされ、そして幸いなことに彼らの気が狂ったような聴覚的作品が以前より理解しやすくなったりしているわけではない。メタルの中には頭を振らせたり拳を突き上げたりさせようとするものもあるが、殺人鬼の動機が一切説明されないようなホラー映画のように、不気味で抽象的なイントロの「Nth」、深い赤にそまったノイズメタルの猛攻撃の「スポアーズ」、そして幽霊のうめき声のようなレコードをスクラッチしたアウトロの「オールド・ガード」を含む『イオン』の9曲は、どうやらリスナーに恐怖と混乱を引き起こすことを目的として作られているようだ。そうならないよう幸運を祈る。



12位 ウィンドハンド『エターナル・リターン』

ヴァージニア出身のドゥーム・バンド、ウィンドハンドは2018年のサタンズ・サテュロスとのスプリットアルバムという高く飛び上がるような“魔術“から離れ、4枚目のアルバム『エターナル・リターン』で彼らの象徴である暗闇から軽々と抜け出た。ニルヴァーナ『ブリーチ』のむき出しの魂の護衛人として最もよく知られるプロデューサーのジャック・エンディノは“スラッジ祭り”に繊細な研磨機を持ち出し、ベーシストのパーカー・チャンドラーが弾く音が1音も霧の中に消えていかないようにした。ヴォーカリストのドーシア・コトレルはクールな小声で指揮を取る。彼女の押し殺した唸り声は、バンドの困難な状況を見つめるような哀歌の表面にぶら下がっている。失望的な1曲目「ハルシオン」で、「年中苦しむことになるんじゃないかい?/死にながら水を夢見ているのかい?」と彼女は歌う。「そうしてくれたらいいのに」 という時、その声はうっすらと熱を帯びる。



11位 ホーント『バースト・イントゥ・ザ・フレイム』

シン・リジィがシュレッドギターのハッピーな80年代のメタルバンドとして生まれ変わったのを想像すれば、レトロを忠実に再現し恥ずかしげもなくやり過ぎるホーントの魅力を感じることができるだろう。ギタリスト/ヴォーカリスト/ソングライターであるトレヴァー・ウィリアム・チャーチ(彼はよりブラック・サバスに影響に受けたバンド、ビーストメイカーも率いており、父親はその昔モントローズでベースを弾いていた)の新構想であるこのバンドは、そんなに作り込まれておらず正統派なキャッチーさもない、キッチュさを狙った曲に特化している。その名に背かない残忍なタイトルトラックからもわかるように、このバンドは彼らが再現しようとしているあの時代の輝きと怒りを掘り下げようとしていただけではなく、「リフレクター」や「マイ・ミラージュ」のように厭世的な哀愁的な部分にも踏み込んだ。このアルバムはバックパッチのデニムベストの夢でできている。


Translated by Takayuki Matsumoto

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