エース・棚橋弘至が恐れる「プロレスブーム」の先にあるもの

棚橋弘至(Photo by Shuya Nakano)



─ケニー選手に対して「品がない」といった理由が、これでよくわかった気がします。先日、ケニー選手にもインタビューをしたのですが、おそらく彼も棚橋選手が言いたいことがわかっているのではと。ただし、それを飲み込んだうえで、ケニー選手は棚橋選手に対して、痛烈な批判を浴びせていました。告げ口するわけじゃありませんが、先日行ったインタビューでは、「プロレス」の進化を認めない棚橋選手のことを「ファミコン世代の老害」呼ばわりしていたんです。

棚橋:それはとても上手い例えかもしれない(笑)。ケニーから見れば、僕が進化を嫌う時代遅れみたいに思えるんでしょうね。もちろん僕にだって、時代に対して柔軟に対応しなければいけないという意識はありますよ。今のゲームだって大好きですし(笑)。

─ゲームのキャラになっているくらいですもんね。ただ、ケニー選手に言わせれば、棚橋選手は古い新日本のスタイルにこだわりすぎていて、世界のマーケットが見えていないと。自分やオカダ、内藤といった現在のトップたちが、ちゃんと世界を意識したプロレスをしているからこそ、新日本プロレスが大きな利益を上げているんだとも。

棚橋:それも実に短期的な見方だなぁ。ケニーは世界を意識したプロレスというけど、僕に言わせれば単に海外のファンに迎合しているようにしか見えないですよ。向こうのファンにしてみれば、日本の団体が海外のような試合をしているぞ、みたいな物珍しさがあるんじゃないかな。

─なるほど、そういう見方もできるのかもしれません。

棚橋:さっきの話と同じで、それではすぐに飽きられてしまうんです。日本の団体が世界で勝負するなら、自分達が自信を持って育ててきた日本のスタイルを届けなきゃ。もちろん、純粋な新日本流が受け入れられるのには時間がかかるかもしれない。だからといって、安易に海外に迎合していたら、結局のところ競争力を失ってしまうし、ひいては日本のファンをも失うことになりかねないと思いますね。

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棚橋弘至(Photo by Shuya Nakano)

─グローバルを意識した戦略を目指すケニー選手と、「国産」の魅力にこだわりたい棚橋選手。ビジネス的な観点でも、互いに一理ある主張ですよね。東京ドームで行われる両者のタイトルマッチが「イデオロギー闘争」といわれるのも納得です。


棚橋:人によってはケニーのほうが前向きで、僕の主張は後ろ向きなものと思うかもしれませんけどね。

─そうですね。棚橋選手がベルトを奪還することにより、ある意味で「時計の針が戻る」と考える人もいると思います。

棚橋:でも、そうじゃないんだなぁ(笑)。今回の闘いで決まる方向は“前後”ではなく“左右”なんですよ。新日本プロレスを成長させたい、プロレスの魅力をもっと広めたいという気持ちは、ケニーも僕も変わらないと思うんです。ただ、その手法が異なるだけ。確かに僕が勝ったら、今のような盛り上がりに水を差すことになるかもしれない。でも最終的には、間違いなくプロレス業界、そしてプロレスファンのために正しい舵取りになると信じていますから。

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