ケニー・オメガと棚橋弘至 「プロレス」を守る者はどちらなのか?

─棚橋選手に対して、かなり手厳しいですね。とはいえ、以前から思っていたのですが、実はレスラーとして棚橋選手とケニー選手との間には、似通っている部分もあるのかなと。闘っている際にも、いわゆる“手が合う”対戦相手のような印象を持ってしまうのですが。実際、ケニー選手からみて、自分と棚橋選手が似ていると感じる部分はありますか?

ケニー:難しい質問だね。もし、2人の試合を見て同じようにみえるところがあるんだとすれば、それは「心」の問題だと思う。立場は違えど自分の信念に従い、プロレスラーとして魂を込めて闘う姿勢は共通していると思うから。

─実は今回、タイトルマッチの相手でもある棚橋選手へのインタビューも予定していまして。なので2人に、敢えて同じ質問をしてみようと思うんです。ズバリ、トップに立つプロレスラーとなるために大切な要素を3つ挙げるとしたら?

ケニー:一つ目は、さっき話した内容にも近いけどパッション(情熱)じゃないかな。最近、その場では盛り上がるけど、後で振り返ってみると何も思い出せないような試合が増えている気がするんだ。これは新日本のリングに限らないことだけど。

─なんとなくわかるような気がしますね。

ケニー:それは、レスラーとしてパッションが不足しているからだと思う。たとえ瞬間の打撃技でも、パッションがこもったものなら、観る人の記憶にはっきり残るはずだからね。

─2つ目の要素はなんでしょう? やはり「強さ」は必要だと思いますか?

ケニー:いや、それよりも大切なのは頭脳だよ。日本だとIQって表現を使うことが多いのかな? ハイレベルな攻防をするために、もっとも必要な要素だと思う。

─プロレスでも、将棋のように「相手の一手先を読む」といった表現をしますね。

ケニー:そう。俺が求めているのはチェスのように高度な攻防なんだよ。でも、IQが低いレスラーにはチェッカーくらいの攻防しかできない。まぁ、チェッカーにはチェッカーの良さもあるけど、プロレスの試合でチェスができるのは限られたレスラーだけだから。



─ここまでに挙がった2つの要素は、精神的なものでした。肉体的な面で大切な要素はあるでしょうか。


ケニー:もちろんフィジカルだって重要だよ。とはいえ、そこも最近は勘違いしているレスラーが多くて、ボディビルダーみたいな肉体を求めすぎているよね。でも、現代のプロレスに必要なのは、よりしなやかでより激しい動きに耐え得る身体だと思う。一言であらわすならアスリートであるべき、というか。バカでかい筋肉を見て喜ぶファンもいるだろうけど、本当にトップクラスの試合をしてファンを感動させたいなら、オリンピック選手並みのアスリートを目指さなきゃ。

─奇しくも相撲でいうところの「心技体」に近いのが面白いですね。しかし、この3つの要素は棚橋選手にも備わっているのではと思います。だからこそ、次の東京ドーム大会でケニー選手とメインイベントを闘えるのかなと。

ケニー:正確には、持っていたというべきかな。それは彼だって、気が付いていると思う。もし、俺が今の彼だったら潔く一線を退くよね。棚橋サンは新日本プロレスを守るというけど、本当に守りたいのは自分のポジションやプライドなんだよ。だったら俺も新日本プロレス、いや現在のプロレスの進化を守るために奴を潰すしかない。それが、2019年最初の“仕事”だね。

ケニー・オメガ
1983年10月16日生まれ。カナダ・マニトバ州出身。2000年2月にウィニペグのローカル団体Top Rope Championship Wrestling でプロレスデビュー。2010年1月より新日本プロレスに参戦。2016年の『G1 CLIMAX 26』では、G1史上初となる外国人選手の初優勝を果たし、2018年6月に第66代IWGPヘビー級王座を獲得。ユニット「The Elite」のリーダーも務める。

WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム
60分1本勝負 ダブルメインイベントII
IWGPヘビー級選手権試合
ケニー・オメガ vs 棚橋弘至 他
2019年1月4日(金)東京ドーム
OPEN 15:00 / START 17:00
https://www.wrestlekingdom.jp/



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