ラスベガスで着工した次世代型コンサート会場「MSG Sphere」の中身

MSG Sphere Las Vegasの完成イメージ(©︎The Madison Square Garden Company)

もしあなたが何十億ドルもの資産をもつCEOで、世界最先端の技術を駆使したコンサート会場を作るとしたら? 「15万7000台の超高指向性スピーカーと、3.5エーカーの半円型超高画質ビデオスクリーン、振動する床を搭載した巨大なドームをゼロから作る」ことにしたのは、実際の億万長者であるジェイムズ・ドラン氏だ。

彼が経営するマディソン・スクエア・ガーデン・カンパニーは、今年9月ラスベガスで、MSG Sphere Las Vegasの起工式を行った。MSG Ventures社のCEOデイヴィッド・ディブル氏は、プロジェクトがドランのオフィスで生まれた経緯を振り返る。「彼は僕に向かってこう言いました。『なあディブル、ライブ・エンターテインメント・ビジネスを生まれ変わらせようじゃないか』って。技術的なことは、後付けなんです。『では、まずビルを建てよう。どんなテクノロジーを導入する?』と聞くと、ジム・ドランは首を横に振りました。『テクノロジーも自分たちでイチから開発するんだよ。テクノロジー主導型のデザインにするんだ』と」

MSG Sphereはツアー興行ももちろん可能だが、どちらかというと、レジデンス公演やスペシャルイベントなど、施設の機能をフル活用できる催しが向いているようだ。ビデオスクリーンは観客の頭上で湾曲し、「プラネタリウムを10倍にしたような迫力だ」とディブル氏。「これまでで地球最大級のディスプレイ」だとも付け加えた(プラネタリウムと違って床面から映像を投影するのではなく、LEDパネルを使用している)。

スピーカーは、ドイツの新興企業Holoplot社製。音響ビームの絞り込みを専門とする同社の製品は、セクションごとに異なる音を送信することが可能(MSGによれば、異なる言語の言葉を特定のセクションに狙いを定めて送ることもできるという)。また、スピーカーが表から見えないよう趣向をこらし、映像ディスプレイの裏側の壁に埋め込まれている。

振動するフロアは、低音がポイントだ。「センサー技術を搭載したフロアシステムを開発しました」とディブル氏。「実はまだ開発中なんですが、一番下の低音は、大気中ではなく、文字通り床面を通して伝わってきます。足元、または座席から音が伝わってくる仕組みです。かなりすごい体験になると思いますよ」

MSGでは音楽イベントだけでなく、ほかにも大胆な用途を検討している。Eスポーツや巨大スクリーンでの「集団ゲーム大会」(1万9000人の友人と一斉にゲームをプレイする)、または「ゴーグル無しで楽しめるVR」のような、ロールプレイング型体験など。

ロンドンでもSphere建設計画が進行しており、MSGの期待は高い。ディラン氏は起工式で、報道陣に向かってこう公言した。「いまから3年後に、皆さんはきっとこう言うでしょう。『こんな風になるなんて、思いもしなかった』と。そのぐらいクレイジーで、とんでもないプロジェクトなんです」

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE