ナタリー・ポートマン、新作映画でシーアのバラードを熱唱

映画『Vox Lux』のナタリー・ポートマン(Atsushi Nishijima/Neon)

ナタリー・ポートマンは、新作映画『Vox Lux(原題)』でシーアが作曲した力強いバラードを熱唱。観客を魅了するシーンが公開された。

世界で話題を集めている、ナタリー・ポートマンがポップシンガー役を演じる話題作『Vox Lux(ヴォックス・ルクス)』。ポートマンが満たされないナルシストなポップスターを演じる新作映画は、痛ましい暴力シーンがあちこちにちりばめられ、視覚的には見ごたえがあるが、作品が意図するポップの毒々しさやきらびやかさをとらえるにはいたっていない。それでも、ラスト数分間は見ごたえあり――成長した主人公のセレステが、故郷スタテンアイランドのステージに立ち、20年間のロングランヒットとなった曲「Wrapped Up」を熱唱するシーンだ――『Vox Lux』はここでようやく、本領を発揮した感じだ。

「Wrapped Up」には2バージョンあり、どちらも映画の中で聞くことができる。最初のバージョンは、家族と生まれ故郷が恐ろしい悲劇から立ち直りつつある中、若いセレステ(ラフィー・キャシディ)が歌うもの。手垢のついていない生まれ持っての才能と、希望と再生をうたうバラードがうまい具合にかみ合って、彼女をスターの座に押し上げる。第1のバージョンの構成はシンプル。曲に合わせて、セレステの姉が壊れたキーボードで伴奏する。

ポートマンが登場するのは映画の後半。業界の売れっ子となったセレステもいまや一児の母。娘は、喪に服した国民の希望の象徴として彼女がスポットライトを浴びた時の年齢に達している。映画の中でセレステは、いかにもポップスターらしい派手ないでたちで現れる。手の込んだメイクとヘアスタイル、ギラギラ光るコスチュームに身を包む彼女は、ポップミュージックのコンサートで目にするような、異星人かアンドロイドのような様相だ。

ここで歌われる「Wrapped UP」は、より壮大で派手なバージョン。もとの調子外れなピアノバージョンの上にシンクロする形で展開する。セレステ自身の声を重ねることで、音楽を担当したシーアが書いた切実なメロディが激しいコーラスに姿を変える。さながら教会の聖歌隊のようだ。天使のようなハーモニーに胸が締め付けられたところへ、ポートマンのソプラノの独唱が優しくサビを歌いだす。「あなたと一緒にいられて幸運だわ/あなたは私を闇から連れ出してくれた/あなたがいなかったら胸が引き裂かれていた/大勢の人を忘れられなくて」ポップソングとしては完璧すぎる気もするが、それこそまさにシーアの真骨頂だ。

Translated by Akiko Kato

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