ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ムービー」トップ20

7位『ファースト・マン

デイミアン・チャゼル監督が、人類で初めて月に降り立った宇宙飛行士ニール・アームストロングを題材に、心澄み渡る人間ドラマを描いた。だが作品の評価とは裏腹に、観客動員のほうはいま一つ。月には白人を送り出すべきだと主張した1960年代の右翼主義者の描写に抗議の声が持ち上がったからだ。はぁ?映画の趣旨はそこじゃないのに。ゴスリングは、ストイックなアームストロングの内なる葛藤を演じてみせた。彼の妻を忠実に再現したクレア・フォイは、大きな重圧にさらされた家族の精神的犠牲をさらけ出した。子供の父親である夫が、月に旗を立てるというつまらない大義のために、死と隣り合わせのロケットに我が身をゆだねるというのだから。※日本公開は、2019年2月8日より

6位『ビール・ストリートの恋人たち

オスカー受賞作『ムーンライト』の次にバリー・ジェンキンス監督が手がけたのは、ジェイムズ・ボールドウィンの1974年の小説の映画化。黒人カップルの恋と、二人を引き裂く権力を描いた原作の雰囲気そのままに、悲哀をにじませながらも希望に満ちた感動作に仕上げた。人種問題の渦中に立たされるハーレムの恋人を演じたキキ・レインとステファン・ジェームスは秀逸。少女の母親役のレジーナ・キングは、底抜けに面白おかしく、感情を爆発させ、ときに威厳たっぷりに、レイブの濡れ衣を着せられた将来の義理の息子を釈放させるべく戦う。ボールドウィンにとって、ビール・ストリートは哀愁の街。映画界の詩人ジェンキンスは、胸につまされる切ないロマンティックムービーで観客を打ちのめし、また癒してくれる。※日本公開は、2019年2月11日より

5位『BlacKkKlansman(原題)/ブラック・クランズマン

スパイク・リー監督がここ数年で手がけた中ではダントツ1位。コロラド警察の警官ロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントンが熱演)が、ユダヤ系の警官(天才アダム・ドライバー)の手を借りて、KKKへの潜入捜査に乗り出し実体を暴く、という1970年代の実話を見事に描いた。リー監督特有の思いやりのあるユーモア、温かさ、ウィット、そして道理にかなった怒りによって、実際に起きた事件は現代社会と響きあい、人種間の憎悪がフェイクではないニュースで取り沙汰されていることを教えてくれる。映画という手法を最大限に駆使し、トランプ大統領にこの作品を突きつけたリー監督に、称賛を贈らずにはいられない。ブラボー。※日本公開は、2019年3月22日より

4位『女王陛下のお気に入り

甘く、邪悪で、ときに笑いを誘う悪だくみ。19世紀後半を舞台にしたこの作品ではそれらを思う存分堪能できる。監督は、世間を騒がすギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス(代表作は『ロブスター』)。オリヴィア・コールマンは鬼ヤバなほど滑稽に――ときに鬼そのものと化して――アン女王を演じる。痛風に侵され、全身ボロボロの女君主は、サラ(レイチェル・ワイズ)とアビゲイル(エマ・ストーン)という敵対する2人の女性に権力を与え、それと引き換えに2人はセックスとしらじらしいおべっかを献上する。女たちの悪知恵合戦がお気に召したなら、傑出した3人の女優の実力のたまもの。彼女たちの誰かにアカデミー賞の栄誉がもたらされることは間違いない。※日本公開は、2019年2月15日より

Translated by Akiko Kato

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