アイス・キューブが語る、オルタナ右翼、国境の壁、カニエのトランプ熱

ーラップは2010年以降大きく変わりました。ちょうどあなたも、ひとつ前のアルバム『I Am the West』をリリースしたころですが、時代の流れの中で、自分の立ち位置を意識していましたか?

いいや。大事なのは『I Am the West』だからね。超実験的なことをしようと考えてたんだが、それがある程度うまく行った。今回のアルバムでも何も気にしなかったよ。ただ、アイス・キューブのファンのことと、彼らが俺に何を求めているのかってことだけは意識した。自分が自信をもてるアルバムにしよう、という思いで臨んだのさ。ラジオでかかるような曲じゃないかもしれないが、俺のファンは気に入ってくれるアルバムだよ。

ー実際にリリースされましたが、次の目標は?

地方のスポーツ局22社を買収しようと思っている。いま頭の中ではそればっかり考えている。スポーツ業界はあまりにも長いこと一部の人間が牛耳ってきたから、そろそろ空気を入れ替えるべきだと思ってね。アメリカだけじゃなく、全世界で、新しい風を入れて、スポーツや文化を変えるのさ。新しい人々が、いままでとは違う新しい考え方で見るもの・手に入るものを変えていく時が来たと思う。(地方のスポーツ局の)経営はいまや燦燦たるものさ。スポーツ業界は俺たちを支持するべきだね。

ー買収したら、どんなふうに変えていきたいと思っているのですか?

とにかく活気づける。具体的な秘策を教えるつもりはないけど、今よりも10倍もいいプランを考えている。誰も俺たちみたいな可能性のある連中を見たことがないからね。

「恥さらしもいいところだ。奴はあらゆる手でこの国を冒涜している」

ー新生『friday』の進捗状況はいかがですか?

ビジネス上の理由で、3歩進んで2歩下がるって感じ。でも確実に進んでるよ。どうしても力を入れて実現したい企画なんだ。なにしろ、ファンが望んでるんだ。エンターテインナーなら、少なくとも、ファンが望むものを提供するのが仕事だからね。

ークリス・タッカーに出演を依頼したけれど、まだ返答がない、という話を聴きました。

俺とクリスはしょっちゅう連絡を取り合う仲なんだ。たまに時々会ったりもしてる。俺たちは気が合うんだ。それでも、自分のキャリアについては正しい決断をしなきゃいけない。映画の撮影時期になったら、奴もノリ気になってくれると思っている。

ーDJ Poohも元祖『friday』を共作していましたね。今回も参加するんですか?

ああ。奴は曲作りを手伝ってくれてる。俺たちはTV番組『セレブリティ・デスマッチ』で戦った仲だしね。奴にはぜひとも手伝ってもらわないと。奴は超クリエイティブな男だよ。天才だ。世間ではあまり評価されてないけどね。

ーニューアルバムでは「Ain’t Got No Haters」のプロデュースも手掛けていますね。

やつと一緒だと、あうんの呼吸で仕事できるんだ。しかも最高にいいのが出来上がる。「It Was a Good Day」も奴がプロデュースした。お互いの方向がぴたっと合うと、いいものが出来るんだよ。

ー今年はアルバム『ストレイト・アウタ・コンプトン』のリリースから30周年にあたります。いまあのアルバムを聴いてみて、どんな印象ですか?

映画をプロデュースした時に何回も聞いたんだけど、いまも頭に残っている。いまだに「Something 2 Dance 2」は気に入ってなくて、ボツにするべきだったなと思っている。それと、「Dopeman」はリミックスじゃなくてオリジナルを使えばよかったな。そういう手直ししたいことがまだまだあって、あの時よりもっといいアルバムにできたのに、と思うよ。もちろん、あれはあれで完璧なアルバムだと思うけどさ。今でも気に入っている。最初の3曲は・・・いや、最初の4曲はとくにそう。ハマルよな。

ー『Everythang’s Corrupt』に話を戻しましょう。このアルバムは影の要素が強いですが、今日、あなたが希望を見出せるのはどんなことでしょう?
良識のある人々の精神。俺は、世の中には悪い人間よりも、良い人間のほうが多いといまだに信じているんだ。良い人間は、トラブルが起きないようにと神経をとがらせている。悪い奴らはそうじゃない。世の中には良い人間が大勢いる。一部の悪、『オーメン』のダミアンみたいな悪の権化をのさばらせて、奴らにやられっぱなしでいるなんて、俺たちはどうかしてるよ。


Translated by Akiko Kato

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