U2ボノが語る、貧困問題と音楽ビジネスの未来

「女性は土地を耕すことはできますが、一部の地域では所有は禁止されています」ボノは続けた。「お金を稼ぐことはできる。でも、銀行に預けることはできません。だから貧困というものは……性差別であると同時に人種差別でもあるのです。貧困は差別的で、疎外できる存在を探しているのです」

さらにボノは発展におけるアメリカのサポートの重要性を強調し、提出された削減案と戦い、資金が断たれることによって危惧される事態について警鐘を鳴らしたアメリカ連邦議を高く評価した。「HIV/AIDSのようなウィルスが相手では、やるかやられるかのどちらかしかないのです。それがこの感染症のやり方なんです」ボノは言った。「HIV/AIDSには推進力とパワーがある。ウィルスとの戦いは、アメリカが第二次世界大戦中にとった介入策ほど大規模なものなのでないといけません」

問題解決という課題は、クリエイターとしてのボノの人生の大部分を占めてきた。ONEと姉妹団体の(RED)はAIDS危機への意識を高め、ブランドとパートナーシップを結ぶことで企業からの寄付を得ている。「私にとって歌は組織のような存在です。わかりますか? 両者には一貫性があるんです」ボノは言った。「歌のサビというのは、明確な思考なんです。私は(RED)とONEを歌としてとらえています。ビジネスは歌なんです」

「ビョークというアイスランドの天才シンガーをご存知ですか? ビョークは私が愛してやまない歌い手の一人です」ボノはさらに続けた。「ビョークはよく言っていました。『アイスランドでは、ミュージシャンやアーティストは大工や配管工と同じ存在』だと。私の考えとまったく同じです。私にとって歌は問題を解決してくれる何かなんです。うまく説明できませんが、他のアーティストのように単なるビジネスとして見下すことはできない」


ボノ、2018年12月6日、エコノミック・クラブ・オブ・シカゴにて: Photo: Adam Blaszkiewicz/The Economic Club of Chicago

ボノが言うには、音楽のビジネスとなると、これは現代のアーティストにとってさらに難しい問題だそうだ。とりわけ、ストリーミング主流の時代にアーティストとして生計を立てるなら。

「物事のあり方からして、お金に変換して考えるのは、簡単なことではありません。再生回数の多さによって報酬を受けるなら話は別ですが」10代の若者が数え切れないほど同じ曲を再生することに言及しながらボノは言った。「私は今もそうなんです。同じ曲を100回聴きます。ストリーミングが主流の世界では、結構目立つんです」でも、誰もがそうするわけではない、と付け加えた。「定期購読サービスの場合、再生回数なんて関係ありません。Netflixでは視聴者が動画を何回再生したかによって報酬を変えることはありませんから。でも物事は変わっていくでしょう。より公平になり、音楽業界はさらに進化すると思います」

様々な話題について会話が繰り広げられるなか、ボノは結成当時の初期のU2(「きれいなゴミ」と揶揄されたころ)についても語り、いかにして怒りと摩擦が原動力になったかについて語ってくれた——ジ・エッジがいつもなだめてくれたことも(「視覚と手を使うプロにはケンカを売ったらいけないって学んだよ」とジョークをとばした)。若き日の怒りは今でもボノにとっての原動力ではあるが、それは決まってポジティブな影響を残す。

「私をいらだたせること、世界中のどんなことよりも腹がたつのは、私をはじめとする人間の将来性を無駄遣いすることです。愛を定義する必要があるとしたら、私はそれを自分と他者の将来性に気づくことだと思います。それ以上でもそれ以下でもありません」ボノは言った。「バンドメンバー全員にベストを尽くしてほしい、結婚相手、あるいは子どもとの関係もそう……貧困による絶望や極度の貧困状態ほど人間の将来性が無駄遣いされている状況はありません。そして、前にも言っていますが——紋切り型になってないといいけど——住む場所によってその人の生死が決まるのはおかしいんです。そう思うと、ほんとうにやり切れない」




Translated by Shoko Natori

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