死亡者も…同性愛者の間でトレンドになっている「パンピング」の危険性

シリコン注入が原因の死者には、2017年11月に死亡したドヴァック、臀部に複数回注入したマイアミのトランスジェンダー女性(この女性に混合剤を注入したオニール・ロン・スミスは医師免許を持たずに施術した罪で禁錮10年を言い渡された)、そして今年10月に死亡したTumblrのゲイセレブ、タンク・ハファーテペンがいる。このハファーテペンはドヴァックがオンラインでアドバイスを求めたゲイナーで、シリコン注入症が一因の肺出血で死亡したと、ローリングストーン誌が入手した彼の死亡診断書に記載されていた。

「僕もタンクに自分でやりたいと相談した」と、ハファーテペンの友人ドミニク・スライックが教えてくれた。「でも、それが死に至る行為だと誰も教えてくれなかった。知ったのは実際に死人が出てからで、そのあとにタンク自身がシリコン注入が原因で死んだ」と。

ゲイナーとフェティッシュが集まるオンライン世界では、性的な羞恥心を消すために肉体にシリコンを注入した場合に生じる問題点を、正直に話し合うべきだとする人々と、分かっていてもそうしたくないという人々に分かれている状態が続いている。Tumblrにはシリコン注入を避難する投稿が多数上がっているが、そのほとんどがゲイナー・コミュニティの人々から反発を受けている。

「この投稿の目的はみんなを辱めたり、困惑させることではない。僕の目的は非常にシンプルだ。大量のシリコン注入が死を招くことを男性たちに気付いてほしい。施術中や注入直後も危険だが、一度注入するとその後決して止まらない時限爆弾を抱えることになる」と、あるTumblrブロガーはハファーテペンが死亡した後に投稿した。「これは悲劇だし、無分別だし、最悪だ。自分の望みの容姿にしたいだけなのに、それで死ぬなんて馬鹿げている」と。

ゲイ男性がシリコン注入を行うというこの危険なトレンドを受けて、医師や研究者の考え方に変化が起こった。前出のラディックスは「これからはここにやってくる男性患者には、問診でシリコン注入を確認すべき必要性が出てくるかもしれない。患者自ら話す前に聞くべきだろう」と言う。

しかし、ドヴァックにとって、シリコン注入のリスクは、大きな身体を求める気持ちに比べたら大した問題でもはなかった。

4度目の注入後、彼は呼吸器官に不調をきたして病院へ搬送され、到着後すぐに医師の判断のもと医療的昏睡状態に置かれた。それから3日後、ドヴァックの母親が病院に呼ばれ、息子が死の淵にあると伝えられたのである。

「火曜日の夕方、彼の酸素レベルが下がっていく様子を見ていた。彼の肺は両方ともひどい炎症を起こしていて、ほぼ使い物にならない状態だった」と、ウォルトマンが言い、ドヴァックの生命維持装置が外されて心臓が止まるまで90秒だったことを教えてくれた。

「彼を抱きしめたら、とても冷たく、まったく動かなかった」とウォルトマン。「どこかで(シリコン注入症の患者の)98パーセントは1カ月もすれば回復すると読んだことがある。不幸なことに、僕のパートナーはそうじゃない2パーセントだったってことだ」と。

Translated by Miki Nakayama

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