App Storeの課金モデルに対する訴訟がSpotifyに与える影響とは?

現在、ユーザーがiPhoneアプリを正規購入できるのはApp Storeのみ。(Photo by Valentin Wolf/imageBROKER/REX Shutterstock)

SpotifyとApple Musicの戦いに、アメリカ最高裁判所が割って入ることになるかもしれない。

ユーザーがAppleのApp Store課金モデルを訴えた件で、11月26日の週、最高裁判所で口頭弁論が行われたが、おおむね原告側が有利なようだ。Spotify、YouTube、Pandora、SoundCloudなど、Apple Musicと競合する音楽ストリーミング会社にとっては朗報だろう。

およそ10年も続いているこの裁判(Apple Inc. v. Pepper)は、iPhoneアプリ用マーケットプレイスをAppleが独占しているのは連邦独占禁止法に違反するか否かが焦点となる。

現在Appleはサードパーティのアプリ開発者に対し、App Storeでの売上の30パーセントを手数料として徴収している。ユーザーがiPhoneアプリを正規購入できるのはApp Storeのみ。訴訟を起こしたユーザー側は、現行モデルでは開発業者はアプリ価格を吊り上げざるを得ない状況だと主張している。ユーザー寄りの判決が下されれば、App Storeの閉鎖的な態勢と高い歩合手数料は終焉を迎えることになるだろう。最高裁がいつごろ判決を下すかは、まだわかっていない。

判決が出れば、音楽ストリーミング各社は真っ先に歓喜の声をあげるはずだ。2011年初め、App Storeが誕生してまもなく、Napster(当時はRhapsodyと呼ばれていた)は、音楽ストリーミング各社に対する手数料の歩合が不適切であると抗議した。音楽ストリーミング会社はロイヤリティに高額を支払っているため、30パーセントの手数料ではほぼ儲けが出ないからだ。

2016年にはSpotifyが、Appleは「Spotifyおよび同社のユーザーに多大な損害を与えている」として非難。プロモーションキャンペーンを展開し、App Store経由ではなく、Spotifyのサイトから有料プレミアム会員に登録するようユーザーに呼びかけた。Appleは独禁法違反の主張を一蹴し、代わりにSpotifyに批判の矛先を向け、「優遇措置」を求めるSpotifyの姿勢を批判した。

その他のストリーミングサービスを見てみよう。Pandora PlusはiPhoneユーザーからは儲けが取れない状況に甘んじ、穏便に事を済ませている。iHeartRadio PlusやSoundCloud Goなど他社は、App Storeでの販売価格を上げてAppleへの手数料支払い分を賄っている。

裁判所が独禁法違反の判決を下せば、こうした面倒な妥協策や収入の損失は消えてなくなり、非Apple音楽ストリーミングサービスはApple Musicと足並みをそろえることが可能となる。音楽サービスはどこも有料会員費をそのまま懐に収めることができ、さらに重要なのは、ユーザーにとっても、アプリへのアクセスおよび購入がぐんとラクになる。

もちろん、最大手Appleには痛手だろう。「アプリ事業は、Appleにとって免罪符なんです。アプリ事業は収益率が高く、Appleの事業収入の大多数を占めています」。MIDiA Research社のマーク・マリガン氏は、最近ビルボード誌とのインタビューでこう答えた。Apple Musicへ簡単に登録できるのがApp Store最大の売りだが、競合他社にとってはボッタクリに近い。Apple Musicはたった3年で既に5000万人が有料会員として登録しているが、10年戦士のSpotifyのユーザー数は1億9100万人、このうち有料会員はたったの8700万人だ。

Translated by Akiko Kato

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