EUの著作権法改正案「第13条」はミュージシャンの味方か? YouTubeと音楽業界の見解

「デスパシート」ミュージックビデオ撮影中のダディー・ヤンキーとルイス・フォンシ(公式YouTubeより)



ウォシッキー氏やコーエン氏も、音楽業界で完全に孤立無援と言うわけではない。フランス音楽界のレジェンド、パスカル・ネグレ氏は、ユニバーサル・ミュージック・グループのフランス支社を18年間取り仕切ってきた。現在はインディーレーベル「Six et Sept」のトップを務めるほか、Live Nation系列のアーティスト・マネージメント会社#NPを運営する。

ネグレ氏はかねてより、レコード会社がアーティストを発掘する手法に第13条が影響を及ぼしかねないとして、強い懸念を表明してきた。彼はフランス人パフォーマーKendji Giracを例に挙げた。ネグレ氏が彼を見出したきっかけは、YouTube上にあがっていたカバー曲を歌う彼の動画。それが今ではアルバムセールス250万枚を誇るアーティストに成長した。ネグレ氏は、第13条が「世の中を進化させるのではなく、時計の針を逆に回す」と警告する。「次世代のアーティストが世に出ていくプロセスそのものが、蝕まれてしまうかもしれない」

そもそも、第13条の可決がYouTubeでのアーティストの稼ぎにどう影響するのか、疑問に思うのは当然だ。ざっくり簡単に説明しよう。とあるレコード会社が、YouTubeに楽曲の使用許可を拒んでいるとする。だがレコード会社は、ユーザーがこれらの楽曲をYouTube上にアップロードするのを禁じることはできない。第13条はこうした事態が起きないようにと、法的責任をYouTubeに負わせ、ロイヤリティ交渉においてレーベル側(ひいては所属アーティスト)により強いカードを与えているわけだ。

YouTubeの主張によれば、既存のアルゴリズム主導による著作権取締ツール「Content ID」は、99.5パーセントの割合で違法動画を検出するという。だがこの数字も、毎分400時間以上ものコンテンツがYouTube上にアップロードされている事実を考慮すれば、安心材料にはならない。

こうした状況を、ワーナー・ミュージック・グループのCEOスティーヴ・クーバー氏は遥か昔に見事に言い当てていた。昨年明るみになったメモ(同社がYouTubeとグローバル契約を更新してほどなくリークされた)には、こうある。「事実は事実として直視しなくてはいけない。仮にYouTubeが著作権使用料を払ったとしても、我々の音楽はどこででも手に入るし、そこから一銭も入ってこない。こうした状況では、『売りたし・買いたし』の自由市場はもはや成り立たない」

他の音楽業界の重役はつねづねこうした状況を「頭に銃を突きつけられた状態での交渉」とたとえている。

スーザン・ウォシッキー氏やライアー・コーエン氏によれば、第13条がもたらす「意図せぬ結果」とは、こうした音楽業界の重役が逆に自ら銃を取り、自分たちに向かって引き金を引く可能性もある。

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