EUの著作権法改正案「第13条」はミュージシャンの味方か? YouTubeと音楽業界の見解

三大レーベル(ユニバーサル、ソニー、ワーナー)の代弁者である国際レコード・ビデオ制作者連盟(IFPI)は、Googleのデータが「自分たちの統計と一致しない」と主張している。IFPIのデータによると、2017年に全動画ストリーミングサービス(大部分がYouTube)から得られたアーティストおよびレーベルの収入は、総額8億5600万ドルで、「Googleが主張する数字の半分以下でしかなく、アメリカ人は1人あたり年間で1ドルも払っていないことになる」。

分かりやすくいうと、YouTubeは毎月10億人の音楽ファンにリーチするが、その結果アーティストやレーベルに支払う額は1年で10億ドル強。一方でレコード会社を中心とする音楽業界は、YouTubeが抱える膨大なオーディエンスを大事に思ってはいるが、YouTubeが支払いをピンはねしていると考えている。

さてどちらの言い分を信じるか? YouTubeが真実を語っているのか否かは、この先数カ月で明らかになるだろう。

ポール・マッカートニーの話に戻ろう。彼の公開書簡は、YouTubeを「音楽業界の生態系を脅かす存在」としてあからさまに糾弾している。夏に欧州議会が、いわゆる「ヨーロッパ著作権指令」と呼ばれる新たな重要法案の表決を行った際には、マッカートニー氏自身自ら議員たちに呼びかけた。この著作権指令法には、物議を呼ぶ条項が含まれている。それが第13条だ。

第13条により、今後YouTubeにアップロードされたコンテンツが著作権を侵害した場合、YouTubeが法的責任を問われることになる。現行の法律では、ヨーロッパでもアメリカでもYouTubeはいわゆる「免責条項」によって保護されている。すなわち、仮にユーザーの1人が、たとえばカーディ・Bのアルバムを不法にアップロードしても、YouTube自体が罪に問われることはない。

だが9月12日、YouTubeは痛恨の一打を浴びせられた。Googleの必死のロビー活動にも関わらず、欧州議会は第13条および著作権指令を可決したのだ。法令は年内にもEU法に完全に組み込まれる見通しだ。支払い金額に関してYouTubeとレーベル側の意見が食い違うように、第13条に対する見解も双方で大きく異なっている。

音楽業界のロビイストは第13条に大賛成だ。レーベル側はついに、YouTubeと音楽ビジネスに対する公正な金額交渉ができるのだから。だが目下Googleは、第13条の可決がインターネットの崩壊につながると吹聴して回るのに大忙しだ。またレコード会社に対しても、現代の音楽産業が崩れてしまうとメッセージを発信している。

「我々も第13条の目的は支持していますが、欧州議会の今回の改定法案は意図せぬ結果をまねき、何十万人という人々の生活に甚大な影響を及ぼすでしょう」。YouTubeのスーザン・ウォシッキーCEOは今月初頭、新聞への論説記事の中でこのように述べた。

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