知る人ぞ知る世界最大級のサイケの祭典「デザート・デイズ」潜入レポ

「デザート・デイズ」に出演したタイ・セガール&ホワイト・フェンス(Photo by Takanori Kuroda)

コーチェラやグラストンベリー、ロラパルーザなど、海外の主要フェスが軒並み生配信(ライブストリーミング)を行うようになり、SNSなどを用いたユーザー同士の情報交換も気軽にできる昨今、我々日本人が海外フェスへ参加するハードルもグッと低くなった。しかし、2012年から毎年開催されているデザート・デイズ(通称「砂漠フェス」)は、サイケデリックなロック・ミュージック好きには堪らないラインナップでありながら、知る人ぞ知るディープなフェスである。

キュレーターを務めているのは、ジュリー・エドワーズ(ディープ・ヴァレー)とフィル・ピローン(JJUUJJUU)の夫婦。それぞれのバンドはもちろん、ウォーペイントやタイ・セガールなど夫婦と交流の深いバンドがほぼレギュラーで参加しているほか、アンノウン・モータル・オーケストラやブロンド・レッドヘッド、ヴィンセント・ギャロといった個性的なアクト、さらにはテレヴィジョンやイギー・ポップらレジェンド級のアーティストが毎年並んでいる。基本的に打ち込みやエレクトロを多用しない、いわゆる生楽器主体のアーティストを揃えるという“縛り”があるようで、EDMだらけになってしまった昨今のコーチェラや、“商業フェス化”してしまった多くの大型フェスに食傷気味の、いわゆるロック好き/サイケ好きから熱い支持を集めているのも、デザート・デイズの特徴だ。





2006年にカリフォルニア州デザートホットスプリングス近郊から、同州ジョシュア・ツリー国立公園に会場を移していたデザート・デイズだが、今年さらに会場を変更。同州モレノバレーの人工湖ペリスほとりにある広大なキャンプ場で、10月12日から3日間に渡って開催された。

かねてからそのラインナップに注目し、いつかは行ってみたいと思いつつ、「砂漠にテントを張って、三日間過ごす」というハードルの高さに躊躇していた筆者だが、今年はヘッドライナーにマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、テーム・インパラ、キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードが登場し、他にもスロウダイヴやポンド、名盤『Deserter’s Songs』(1998年)の完全再現ライブを行うマーキュリー・レヴなども出演すると知り、いても経ってもいられずチケットを購入。「キャンプか……まあ、行けばなんとかなるだろう」の精神で、85リットルのリュックサックに一人用のテントと寝袋を詰め込み日本を経った。



会場までは、ロサンゼルス中心街から車でおよそ2時間半。一応、電車も走ってはいるが、やはり「車文化」のロス。フェス参加者の多くは自家用車か、友人同士でヴァンやレンタカー、キャンピングカーをシェアして会場へと向かっている。かくいう筆者は、行きは海外在住の日本人フォトグラファーEさんが手配してくれたレンタカーに同乗させてもらい、帰りはデザート・デイズが手配しているシャトル・バスを利用することにした。



会場に着くと、キャンプ場の広さにまず驚かされる。公式サイトの「注意事項」には、「サソリに刺された場合の処置について」まで記載されていたため恐れ戦いていたのだが、実際は「砂漠のど真ん中」というほど辺鄙でもなく、公衆トイレや簡易シャワーも充実した場所だった。



早速テントを設置し、会場へと向かう。キャンプ場の広さとは裏腹に、フェス会場自体はかなり小規模だ。ステージは4つで、メインの「THE MOON」はフジロックのホワイトくらい、サブの「THE BLOCK」はフィールド・オブ・ヘヴンくらいの大きさである。屋根のある「THE THEATRE」は、レッド・マーキーの半分もないほどで、もう1つ、ドーム状の「THE SANCTUARY」は、都内の小さなライブハウス級の狭さである。「THE MOON」はペリス湖に面していて、「こんなところでマイブラの爆音を浴びたら、どうかなってしまうんじゃないか……?」と想像し、初日から既にテンションMAX状態だった。

会場内を見渡すと、アーティストの公式グッズなどを扱うテントのほか、センスの良い古着屋やアクセサリー・ショップなどが立ち並ぶ(キャンプサイトでは、毎朝ヨガのワークショップなども開かれていた)。さすが、DIY精神にあふれたフェスだけあって、スタッフも参加者もみなフレンドリーかつオシャレ。眩い陽光と乾いた風が心地よく、あちこちからマリファナの匂いが立ち込める空間は(カリフォルニア州では、大麻は合法である)、まさに桃源郷といった感じだ。

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