知る人ぞ知る世界最大級のサイケの祭典「デザート・デイズ」潜入レポ

……と、言いたいところだが、初日はまったく散々な目にあった。

まず、会場までの道路が1本しかなかったため、恐ろしい渋滞が発生し車が全く動かない状態が2時間近くという出鼻の挫かれっぷり。また、夕方くらいから徐々に雲行きが怪しくなってきて、トリのテーム・インパラが出演する頃には雨が本降りに。「え、砂漠で雨? ウソでしょ?」と戸惑っている間にも、雨足がどんどん強まり雷鳴まで轟くようになり、とうとうインパラの途中でフェスが中断となってしまったのだ。


テーム・インパラ

小心者の……もとい、用心深い筆者は、砂漠にも関わらず雨具や防寒具を用意してきていたため、ずぶ濡れにもならずにテントへと逃げ帰ることが出来たのだが、「まさか砂漠で雨など振るまい」と思っていたであろう多くの参加者は、這う這うの体で会場を後にしたようだ。しかも、こうした「緊急事態」の対応が、運営側で徹底しておらず、参加者から多くのクレームが寄せられていた。ただ、昨今話題の「自己責任」ではないが、デザート・デイズのようなDIY的な要素の強いフェスに参加するのであれば、ある程度は参加者側で何とかしなければいけない部分も、少なからずあるような気がする。

とはいえ、楽しみにしていた初日のインパラは3曲しか聴けず、その後に出演予定だったコナン・モカシンやワンド、ルメリアンズなどが公演中止になってしまったのは本当に残念だったし、翌日もステージ補修のため前半のタイムテーブルが大幅に変更。夜は防寒着が必要なくらい冷え込むなど(本当にここは砂漠……?)波乱万丈の前半だった。


ジャーヴィス・コッカー


マーキュリー・レヴ


幾何学模様


スロウダイヴ

しかし、それ以外は、とにかく夢のようなひと時。初日はハインズの可愛い振り付けにトキメき、ジャーヴィス・コッカーのシアトリカルなパフォーマンスに酔いしれたかと思えば、ウォーペイントのミステリアスなステージングにドキドキし、アイドルズのパワフルな演奏に血湧き肉躍る。2日目は、ケヴィン・モーヴィーの脱力的サウンドにクラクラし、マーキュリー・レヴの多幸感溢れるサウンドに涙腺崩壊、幾何学模様のサイケデリックな倍音を脳髄に染み込ませつつ、スロウダイヴが放つフィードバック・ノイズに溺れ(以前観た時よりも遥かに凶暴だった)、ビークが繰り出すストイックなビートに陶酔した。

最終日はマイブラの撮影があったため(今回も、筆者だけ唯一フォトピットに入ることを許された)、前半はグレディス・レイザーやジュリア・ホルター、グーン、アース、デス・グリップスなどを遠巻きに眺めつつ、体力を温存。21時30分からの本番に備えた。


MBVを待つオーディエンス

果たしてこの日観たマイブラのライブは、結論から言うと8月のソニックマニアには遠く及ばない内容だった。屋外ということもあるのか、音量も思ったより小さかったし、プロジェクターの光量が弱かったのか、映像もあまりビビットではなかった。終演後、本人たちと話したらやはり演りにくかったようだし、運営の段取りの悪さにバンド・クルーも若干イラついていた。

とはいえ砂漠にテントを張り、昼夜問わずひたすらサイケデリックな音楽に身も心も浸かって過ごし、仕上げにマイブラを“浴びる”体験など滅多にできるものではなく、とにかく夢のような3日間だった。フォトピットに行けば、世界に名だたるフォトグラファーたちの姿を垣間見ることが出来たし、フェス飯も美味いしサソリにも刺されなかったし、渡航前の心配などどこ吹く風で楽しみまくった。

普通のフェスと比べると若干ハードルは高いが、それだけにプライスレスな体験は間違いなし。世界最大級のサイケの祭典デザート・デイズ、迷っている人は是非とも来年行ってみてはいかがだろうか。

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