コモンが慰問ライブを続ける意味とは? 米国最大の女子刑務所で見たもの

セッションは実のある内容だった。時に古傷をあらわにすることもあった。飲酒運転による衝突事故で娘を死なせたカレン・ハニーカットは、刑務所内で誰とも面倒を起こさないよう、どれほど努力しているかを語った。終身刑を受けたタミー・ギャービンは、Change.orgに対して減刑を訴えていると話した。17歳で罪を犯し、既に12年服役しているレイチェル・ミュリニクスは、何よりも自分たちが犯した犯罪の犠牲者たちに、自分たちが更生したことを知ってもらいたいと強調した。「刑務所はいろんな意味で、私を救ってくれたのよ」

ポッドキャストをしようという提案が持ち上がった。サン・クウェンティン州立刑務所で「Ear Hustle」と題したポッドキャストがスタートしたニュースをみんな耳にしていたのだ。CCWF勤続2年で人望も厚いジャネル・エスピノーザ看守がその場で承諾してくれた。歓喜に沸く受刑者たち。コモンのパフォーマンスが見られる喜びと同時に、自分たちの気持ちを聞いてほしいと切望の声をあげた。


Photo by Sadé Clacken Joseph

まもなく45年以上の禁固刑から仮釈放となるニキ・マルティネスは、コモンの訪問をきっかけに、自分たちの声が世間に広められるのではと期待するようになったという。「外の人々には、私たちも同じ人間で、恐ろしい罪を犯したんだということをぜひとも知ってほしい」と、コンサート前にローリングストーン誌の取材に答えてくれた。「私たちの多くは、今ではちゃんと責任を自覚している。彼が今日ここにきて私たちの前で演奏してくれることで、自分も価値のある人間なんだと感じることができた。この気持ちを外の人々にも伝えたい」

自分たちの人間性に対して世間は無関心だと感じながらも、CCWFの受刑者たちはコモンやAnti-Recidivismのスタッフたちとおしゃべりしながら、自分たちが抱えていた傷をさらけ出した。「女性たちが心の傷とどれだけ葛藤しているか、みんな理解していない」とハニーカット。しばらくして、コモンのTシャツに「Believe Women(女性を信じろ)」という文言が書かれているのに気づき、ハニーカットやその他受刑者にこう尋ねてみた。心に傷を負ったとき、もし誰かに信じてもらえていたなら、罪を犯さずにすんだと思う? 答えは一人残らずイエス。モニカ・マカリクス(36歳)は子どものころ、精神的にも性的にも虐待を受け、最終的には鬱になり、酒とドラッグに走ったのだと言う。「結局、2つの命を奪うという異常な行動に出てしまった」。2人とは、幼い双子の娘たち。彼女は、仮釈放なしの終身刑で服役中だ。

「できることは何でもして、正しいことをしようと頑張っている。外で犯した悪事を償うために」と言うナタリー・ジャスパーは現在51歳。つい1週間前に仮釈放を認められ、まもなく出所する予定だ。「私たちは、ここに来たときとは違う。日々罪を償って、学び続けている。もし世間がそれを知ってくれたら……TVで取りざたされる刑務所の話に耳を傾けるんじゃなくてね。中に入ればわかるわ。ここの女性たちはみんな活気にあふれた、素晴らしい人たちよ」

Translated by Akiko Kato

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