BTSとのコラボでも注目、スティーヴ・アオキが「EDM以降」の時代に生き残れる理由

5枚目のスタジオ・アルバムを発表したスティーヴ・アオキ(Photo by Brian Ziff)

数年前は音楽業界のメインストリームを席巻していたEDMも、現在はすっかり影をひそめてしまった。11月第3週のヒットチャートを見てみると、50位圏内にいるエレクトロ系プロデューサーはたった2人。

現在、EDMのプロデューサーらは、主に3つの流派に分けられる。1つは、ポップスターを支える縁の下の力持ち――ジャスティン・ビーバーやフィフス・ハーモニー、マライヤ・キャリーなどに楽曲を提供しているスクリレックスがいい例だ。だが彼らの存在を確かめるには、クレジットをくまなく探さなくてはならない。2つ目は、「敵わぬ相手とは戦わず、相手の懐に入り込む」という戦術を取る一派。わかりやすい例がカルヴィン・ハリスのニューアルバムだ。このアルバムで彼はEDMらしさを潔く捨て去った。

3つ目は、ディプロを筆頭に、デヴィット・ゲッタやディロン・フランシスなどに引き継がれる一派。つまり、他言語のアーティストが英語圏の音楽シーンに打って出る際の火付け役だ。なかでも、ラテン・ミュージックの爆発的な人気を受けたスペイン語圏のアーティストの場合に多く見られる。

スティーヴ・アオキは、これら3つの手法をいっぺんにこなしてきた。昨年は、本人がいうところのヒップホップ・アルバム『コロニー』をリリース。K-POPスターBTS(防弾少年団)のリミックスを手掛けて彼らの全米チャート入りを後押しし、さらにラテン・グラミー賞授賞式ではJ.バルヴィンとパフォーマンスした。今年に入ってからも、BTSの全米チャートNo.1アルバム『Love Yourself轉 ‘Tear’』からのシングルカットをプロデュースしている。



そんな彼が、ニューアルバム『ネオン・フューチャーIII』をリリースした。K-POP(ここでもBTS登場)からカントリー(レディ・アンテベラム)、90年代のポップパンク/エモバンド(ブリンク182やジミー・イート・ワールド)に北欧サウンド(イナ・ロードセン)、プエルトリコ(ダディー・ヤンキー)にユーゴスラビア(エラ・イストレフィ)、サイエンス系(ビル・ナイ博士)まで、全部ひっくるめてアオキ独自のエレクトロ光線でミックスした意欲作だ。仕上げに、ラテン・グラミー賞授賞式のステージではニッキー・ジャムと共演した。

ここまで来るとやりすぎ感も否めないが、すべての人に出来る限りのことをするのが、アオキの喜び。というよりも、彼自身の話によれば、それが彼の仕事なのだ。「外に出て行ったら、お目当ての相手だけじゃなく、その場にいる全員に話しかけたいんだ」。先週、人気ラジオパーソナリティのエルヴィス・デュランとのインタビューでお茶を飲みながら、アオキはこう語った。「たとえバックステージの人々が自分のことを知らなくても、全員と話すことができたら、自分を知ってもらえるだろ。そしたら、ギグに呼ばれる回数も増える。そうなりゃしめたものだ」

Translated by Akiko Kato

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