テイラー・スウィフトとレコード会社との新契約、他の所属アーティストにも恩恵

Spotifyの支払いをめぐる新契約をテイラー・スウィフトとユニバーサルが発表した(Photo by Shutterstock)

テイラー・スウィフトとユニバーサルが交わしたSpotifyの支払いをめぐる新契約には、何千人もの所属アーティストも対象となる、金銭的なある条件が盛り込まれているという。

米現地時間11月19日月曜日に発表されたテイラー・スウィフトとユニバーサル ミュージック グループ(UMG)、そして傘下のリパブリック・レコードとの新しいレコード契約には、スウィフトが長年待ち望んでいた異例の条件が盛り込まれた。レコード会社との合意の一環としてUMGは今後、Spotify株式売却によって得た資金の一部を控除せずにアーティストに還元しなければいけない。

対象となるのはスウィフトだけでなく、すべての所属アーティストも含まれる。

今回の合意には、包括的ないし曖昧なただし書きがある。3大メジャーレコード会社であるUMG、ソニーミュージック・エンタテイメント、ワーナーミュージックは数年前からそれぞれがSpotifyの株式を所有しており、どこかの時点でスウェーデン発の音楽ストリーミング会社の株式を売却することで得る資金をアーティストに還元することに3社は同意していた。こうしたコミットメントを3社のなかでも最後に掲げたUMGは、Spotifyがニューヨーク証券取引所に上場する直前の3月にアーティストたちに「株式売却によって得られた利益を分配する」と宣言していた。しかし、月曜日に結ばれたスウィフトの契約によると、想定される株式売却によってUMGのアーティストは、たとえそのアーティストがUMGから前払いで受け取った金額を回収できずに赤字状態にあっても、その契約状況に関わらず利益を受け取れることが関係者情報によって明らかになった(ソニーは今年の初めにSpotifyの株式を売却した際に同様のことを行なっている。それに対し、ワーナーはアーティストの債務を無視することを拒否し、株式売却によって得られた利益の大半はワーナーが回収する形となった)。

ローリングストーン誌が一部関係者から得た情報によると、スウィフトが他社を差し置いてUMGと契約する上で、とりわけサー・グレンジの目的はSpotify株によって得た利益をアーティストの債務にかかわらず提供することにあるという、UMGの会長兼CEOのサー・ルシアン・グレンジが掲げるアーティストへの支払いに対するアプローチが決定的だった。UMGによるSpotify株の売却が現時点では仮定に過ぎないため、金額の詳細などは不明だが、Spotifyに関する条件はソニーやワーナーが提示したものを「はるかに上回る内容」であるとスウィフトは述べている。

「UMGとの新しい契約の一環として、私はUMGがSpotifyの株式売却によって得るすべての利益を所属アーティストに控除せず還元するよう要請しました」スウィフトはInstagramに投稿した。「寛大にもUMGは理解を示してくれました。UMGの予測によれば、今回の条件はこれまでに他の大手レコード会社が支払った金額をはるかに上回る内容です」さらにスウィフトは、Spotifyに関する条件は新しい契約の「あらゆる取引内容よりも私にとって意味のあるもの」と補足した。新たな契約によってスウィフトは自ら原盤権を獲得し、これは「クリエイターにとってプラスとなる転換点」のしるしでもある。「そのためなら絶対に諦めない。どんな方法でも勝ち取ってみせる」とスウィフトは述べた。

スウィフトが世界でもっとも影響力のある(そしてもっとも稼いでいる)アーティストとしてのステータスを交渉の場で利用するのは新しいことではない。2015年、スウィフトはアップル社が開始した音楽ストリーミングサービス「Apple Music」の3カ月の無料トライアル期間中もアーティストに報酬を支払うことを主張しただけでなく、Spotifyが提供している無制限プランに対してアーティストに支払われるわずかなロイヤルティへの抗議として、Spotifyを3年にわたってボイコットした(今年の夏にスウィフトは見解を180度変えてSpotifyとの復縁を果たした)。

しかし、それは現代の音楽ストリーミング主体の時代において、かつてレコード会社が持っていた力がアーティストへと移行している流れをさらに推し進めることになる。音楽を専門とする弁護士のグレゴール・プライアーは、Spotifyによる利益の配分をアーティストがレコード会社に負っている債務に関わらず実施するというスウィフトの論点は、これまで想像できなかったようなアーティスト兼ビジネスパーソンというあり方を示した、とガーディアン紙に語った。「ジェイZが運営する音楽ストリーミングサービス『Tidal』で行なったように、アーティストはこれまでレコード会社や出版社の機械として扱われてきたのに対し、自らの正当なリターンを要求するという方向へと変化しています」プライアーは言った。

2008年の財務報告書をもとにMusic Business Worldwideが予測した数値によると、UMGはSpotify株の3.5%を保有している。それは約280億ドルという現在のSpotifyの株式の評価額を考慮すると、10億ドルに値する。


Translated by Shoko Natori

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