追悼スタン・リー:2014年インタビュー再録「アイデアがひらめいたら、少し時間を置くようにしている」

ーマーティン・グッドマンにですね?

マーティンはアイディアを気に入ってくれた。私は「The Mutants(ザ ・ミュータンツ)」という題名がいいと思ったんだけど、誰もミュータントの意味を知らないから、他の名前を考えろ、と言われた。そこで、まあ、特別な力を持つ男と女で、リーダーがプロフェッサー・エグゼビアだからX-MENはどうだろう、という結論に至った。それを出版社に伝えると、マーティンもすごく気に入ってくれたよ。出版社からの帰り道で「誰もミュータントの意味を知らないなら、どうすればX-MENについてわかってもらえるだろう?」と考えた。でも、名前も決まったし、あれこれ考えるのはやめようって思った。それがはじまりさ。

ー1時間前に『X-MEN』の第1号を読ませていただきました。この時点ですべてのコンセプトが明確なのはさすがです。学園という舞台とプロフェッサーXという存在があります。こうした要素が生まれた背景について教えていただけますか?

そうだな、学園を持ってきた理由は……まあ、ティーンエイジャーを主人公にしたかったから。若くはないけれど、10代後半のティーンエイジャーたちをね。だから学校に通わせないといけなかった。そこで学園のリーダーはどうしよう? と考えた。大人が統率しないといけないからね。詳しいことはよく覚えていないけど、精神的な力の持ち主という存在はどうだろう? と思った。テレパシーで自身の思考を伝えたり、他者を意のままに操ったりできる能力者はどうだろうってね。そこで世界最強の精神力の持ち主というアイディアが生まれたんだ。

でも、どうしてエグゼビアと名付けたかはわからないんだ。本当に覚えていないんだよ。ファーストネームはさておき、ラストネームはエグゼビアと決まった。そしてこの人物を学園のトップにしたらどうだろう? と考えた。年配の人物という設定にし、恵まれた若者のための学園ということにして、ミュータントが集い、交流する場所を作った。そこでチームが生まれるんだ。プロフェッサーXと名付けたプロフェッサー・エグゼビアが彼らのリーダーになる。

そうするうちに、他者の思考に忍び込み、操ることができるプロフェッサーXの能力はあまりに強力すぎる気がした。そこで、プロフェッサーXには脚の障害という弱点を与えた。車椅子の人物にしたんだ。いいバランスだと思ったよ。本当の意味でのはじまりはここからなんだ。

ーご自宅で創作活動に取り組まれていた時期もありましたね? もっと後の話かもしれませんが、プールサイドで立ったまま執筆していましたよね?

そうそう、夏はそうだったね。

ー普段はどのように仕事をしていたのですか? タイプライターの前だったり、あるいはジャック・カービーと電話で話したり……詳しく教えてください。

タイプライターの前に座って作業するか、天気がいい日はテラスにタイプライターを出して立ちながら仕事をした。太鼓腹の作家の知人が何人かいたから、そうはなりたくなかった。だから、仕事をする時はできる限り立ってしようと決めてたんだ。

ースタンディングデスクはあなたの発案ですね?

その通り。自宅で執筆し、1週間のうちの数日はオフィスで編集作業をしていたから、このやり方がうまくいったんだ。

ー新しいシリーズとなると、タイプライターをたたいてご自身で企画案を作成できますよね? たとえば、創刊号の構想に補足するなど。ロイ・トーマス(漫画家・歴史家)が『ファンタスティック・フォー』に関するあなたの企画案を発見したそうですね。

そうだね、新しいコミックに関するアイディアがあれば、簡単な企画案として書き留めていたよ。主に自分の備忘録としてだけど。というのも、物事を覚えておくのが本当に苦手でね。書いておかないと、翌日出版社に行っても内容の半分は忘れてしまっているんだ。

ー『X-MEN』のコンセプトが固まるまで、どれくらい時間がかかりましたか?

わからない。だから答えられない。あまり時間はかかっていないはずだよ。かかったとしても1日だろうね。新しいコミックに取りかかる際のやり方としては、まずはどんな超能力にするかについて考える。どこでその力を授かったのか? 名前は? 名前が決まり、超能力の詳細と力を得た経緯や起源などがはっきりすれば、物語を作っていくのは簡単だ。キャラクターを作っていく作業が一番難しい。

ーもう一つの大切なこととしては、善いミュータントと悪いミュータントというアイディアがあります。

でも、初回で誰が悪役だったかは忘れてしまった。

Translated by Shoko Natori

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