ONE OK ROCKの「音楽DNA」を再確認、オーケストラとの競演で見せた実験性とリアリティ

今年の4大ドームツアー「AMBITIONS JAPAN DOME TOUR」のときにも過去を振り返るパートがセットリストの中に設けられていたが、彼らは「後ろを振り返り、原点を見つめ直す」という作業を大切にしているバンドだ。もちろんただ懐かしむだけではなく、そこには次に進むための「新しい解釈」や「新しい視点」が加えられている。そして次のステップへと進む。

気づけば活動歴も15年近くを数え、「ONE OK ROCKのようなバンドをやりたい」という理由で楽器を手に取り音楽の世界を志す人たちもいるだろう。ただ本人たちは「憧れられる存在」から、名実ともに「世界のアーティスト」への階段を上っている。まだ誰も見たことのない領域へと連れて行ってくれるような、日本を代表するバンドになるために、この日のオーケストラとの競演も彼らには必要なプロセスだったのだ。

セットリスト後半は「Pierce」からの緊張感を湛えたインスト曲を挟み、今回のツアーで初披露となった新曲が最大のポイントだろう。「今日はオーケストラ・バージョンで楽しんでください」というTakaの言葉のように、総勢53名のオーケストラの生音が加わったこの日の演奏とオリジナルの曲ではまた異なる印象を受けるかもしれない。とはいえ、ONE OK ROCKの「第2章」と位置付けている「Change」以来となる新曲だ。客席から大きな歓声が上がった。


Photo by Run Hashimoto(SOUND SHOOTER)

カラフルな色彩を帯びたグルーヴとメロディは、「完全感覚Dreamer」の激しさ、「The Beginning」のエモさとは完全に異なるものだ。ザ・チェインスモーカーズのようなポストEDMのプロダクションも透けて見えるメジャー感、そして風通しのいい「抜け感」が聴いていて気持ちがいい。この日のライブの開演前にはトゥエンティ・ワン・パイロッツ「My Blood」、チャーリー・プース「Attention」などがかかっていたが、たしかにその文脈で語りたくなるキャッチーな一曲で、彼らが次に目指している場所がなんとなく分かった気がした。

新曲の余韻が残るなか、Tomoya(Dr)のバスドラとスネアが高らかに鳴り響く。ロック・アンセム感のある「 I was King」では、管楽器によるファンファーレ調のフレーズがアクセントに。「The Beginning」ではシンコペーションの連打にストリングスが絡むことで疾走感が倍増。分厚いシンガロングで客席と一緒に盛り上がっていく「Mighty Long Fall」では、ギターとオーケストラによるダイナミックなリフが形成されていた。3曲続けた後、TakaはMCでこう話した。

「今年はドームのツアーだけじゃなくオーケストラ・ツアーもやらせてもらって、バンドとして見たときに、あと何個夢を叶えられるだろうかって考えました。2019年、さらにパワーアップしたONE OK ROCKを僕らの一番大事なファンに見せたい。口だけだったらなんとでも言えるんです。ライブはスケジュールが決まったらやるだけだし、アルバムだって曲ができれば出すだけだし、でもどうやって自分たちの気持ちを皆さんに見せていくのがいいのか、いつも考えてます。残り2カ月ちょっと、今年を全力で駆け抜けるためにも今日のこの想いを胸にまた明日から頑張ってください。皆さんと同じように自分たちも戦っていきます」

そして披露したのは「Fight the night」。Toru(Gt)のギターに合わせて、ヴァイオリンやコントラバスなどの弦楽器がハーモニーを奏でていく。Takaのヴォーカルの透明感、浮遊感のあるグルーヴを生み出すRyotaとTomoyaのリズム隊。壮大なスケール感を感じさせながら本編は幕を閉じた。

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