CDアルバムは絶滅してしまうのか? 売上減に響く「アルバム相当単位」の影響

2018年11月1日、米ワシントン州タコマのタコマドームで演奏するドレイク(Photo by Mat Hayward/Getty Images)

アメリカ国内では今年、CDやレコードの売上が急激に落ち込んでいる。アメリカレコード協会(RIAA)が発表したデータによれば、2018年上半期の全米のアルバムセールス(ダウンロード、CD、レコード)の総計は、前年同期比で25.8パーセントも減少した。

もしこのまま年末まで減少が続けば(そうなるとの見方が強い)、2018年の全米アルバムセールスは、直近でいえば2015年の半分程度となる見込み。もっと具体的にいえば、アメリカの消費者がアルバムに支払った金額は、昨年よりも5億ドル少ない計算になる。

2018年上半期のアメリカ国内のアルバムCD収入はほぼ半減、41.5パーセント減で2億4600万ドルだった。

年間アルバムセールス

トータル/有形 出典:RIAA
※有形とは、レコード盤およびCDアルバムを指す。トータルにはダウンロードアルバムも含まれる。2018年分はMusic Business Worldの予測。

理由は想像に難くない。2018年は、有形アルバムセールスの減退がもっとも加速した年となるだろう。ドレイク、エミネム、カーディ・B、トラヴィス・スコット、ミーゴス、カニエ。ウェストといったアーティストらは最新アルバムをまずデジタル配信サービスで限定リリースする。CDやレコードが戦力になってくるのは、これら“先行販売”の波が収束した後だ。

ヒップホップの大御所らはSpotifyやApple Musicなどに積極的だ。実際これらのメディアでは、ヒップホップがダントツの人気を誇っている。

もちろん、こうした傾向はさほど驚くことでもない。

2014年を振り返ってほしい。Spotifyの共同創業者ダニエル・エクが、自分の楽曲をすべてSpotifyから撤収すると宣言したテイラー・スウィフトと大っぴらにやり合ったのは記憶に新しい。Spotifyがアルバムを「食い物にしている」という批判に対し、エクは声明文でこう反論した。「古き良き時代は、多くのアーティストが毎年何百万ドルもアルバムセールスで稼いでいました。そういう時代はもう終わりです。人々の音楽体験は変わりました――もう元には戻れないのです」。

彼は間違っていなかった。周知の通り、音楽業界はエクと手を組んで、利益第一のストリーム主導型ビジネスへ身を投じていった。

だがここへきて、疑問の声も少しずつ聞こえ始めた。拝金主義に走った音楽業界は、自分たちも気づかない大事なものを犠牲にしてしまったのではないか?

たしかに、ストリーミング配信によるヒット曲は大勢の人々に莫大な富をもたらす。だが、アルバムが風前の灯となった今、音楽業界がビートルズ以前の楽曲切り売り時代に逆行しつつあるが、それはすなわち、新人アーティストとファンの関係性が希薄なものになっていくよう、仕向けていることにはならないだろうか?

この問いに対する答えは、結局のところはファン次第。彼らがSpotifyやApple Musicでどのように音楽を聴いているかによる。ひとつだけ確かなのは、全ての新曲が同じように制作されているわけではないということ。それは統計にもはっきり表れている。

ドレイクの『スコーピオン』を例に挙げよう。今年アメリカでもっともヒットしたアルバムだ。多くのストリーム件数を稼ごうと(ついでに多くの新記録を達成しようと)いう狙いから、『スコーピオン』には25曲が収録された。しかし、Spotifyの動向を調査するサイトKworbから入手したデータによれば、6月のリリース以降『スコーピオン』が全世界のSpotifyで獲得したストリーム件数のうち63パーセントは、収録曲のうちのわずか3曲「ゴッズ・プラン」「イン・マイ・フィーリングス」「ナイス・フォー・ホワット」によるものだった。

事実、アルバムのうちたった6曲(先の3曲に加えて「ノンストップ」「ドント・マター・トゥ・ミー」「アイム・アプセット」)が、アルバムの全ストリーム件数の82パーセントを占めている。他の19曲の割合はたったの18パーセント――1曲あたり1パーセントにも満たない。

Translated by Akiko Kato

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