米銃乱射事件、容疑者を殺人に駆り立てたものは果たしてPTSDなのか?

イアン・デイヴィッド・ロング容疑者の自宅前に立つFBIの捜査員(Photo by Al Seib / Los Angeles Times)

先週、米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外サウザンド・オークスのバーで起こった銃乱射事件。12人を殺害した元海兵隊員のイアン・デイビッド・ロング(28)容疑者は現場で自殺。事件の動機についてはまだ判明していないが、CNNの報道によると、捜査当局はロング容疑者が事件発生前にアップロードしたとおぼしきFacebookの投稿を特定したという。

「俺のことをみんなイカれてるって思うだろうな……(笑い顔の絵文字)……それってすっげえ皮肉じゃねぇ?」という投稿をCNNは報じている。「そうさ……俺はイカれてる。だが、乱射事件のたびにお前らはひたすら“祈りと希望”を口にする。もしくは“あなたのことを忘れません”ってやつだ。毎回同じ。そして何でこんなことが起き続けるんだろうって不思議に思うのさ」

サウザンド・オークスでの事件を含めると、2018年アメリカ国内では307件の銃乱射事件が発生した。

ロング容疑者の友人がCNNに語ったところでは、彼は犯行現場となったレスランバーの常連だったという。西部開拓時代をイメージしたレストランバーは、サルサやスウィング、カントリーといった音楽とラインダンスを売りにしていた。事件当夜、バーではカレッジ・カントリー・ナイトというイベントが開かれており、多くの学生が犠牲者となった。その中には、同じくカントリー音楽イベントの最中に起きたラスベガスでの乱射事件を経験していた者もいたと言う。

「ここにはコミュニティが形勢されていました」と、ロングの友人は匿名でCNNにこう語った。「彼もコミュニティの一員でした。店内が一斉にラインダンスをするんです。みんなで何時間も一緒に、同じ振付で踊るんです。サウザンド・オークス郊外のど真ん中で、カウボーイブーツとカウボーイハットをかぶってね」

CNNの取材を受けた友人らは、ロングの犯行だと知ってショックを受けていた。彼は「優しくて」「いいやつで」「いつも幸せそうにしていた」と、彼らは語った。

「彼はイカれてなんかいなかったし、暴力的でもありませんでした」と友人の1人は振り返る。最後に会ったのは2年前だった。「彼は国の為に尽くした、心優しい男でした。復員軍人保護を申請して大学に通い、もっと多くの人を助けるために単位を取ろうとしていました。僕ら仲間の中では、彼を一番尊敬していました」

ロング容疑者が通っていた高校で陸上コーチをしていたというドミニク・コーレル氏は、ニュースで彼の名前を聞いたとき、他の人々とは違う反応をした。

「彼の名前がニュースで読み上げられたとき、びっくりして、開いた口がふさがりませんでした」とコーレル氏はTV局KCALに語った。「彼に襲われたことがあるんです」。

コーレルの主張によると、ロング容疑者はニューベリー・パーク高校3年生のとき、陸上の練習中に彼女に暴行したと言う。コーレル氏いわく、誰かが電話を見つけたので、持ち主を探そうとしていたときだった。

「イアンがやってきて、自分の電話だとわめき出しました」とコーレル。「彼は私につかみかかってきて、私の腹を、次にお尻をまさぐり始めました。私は彼を突き飛ばし、『あなたは退部よ』と言いました」。

他のコーチや教師らは卒業後のロングの海兵隊入隊に支障が出るのを懸念して、ローレルに対し、彼の謝罪を受け入れて起訴しないほうがいいと勧めた。このときの決断を彼女はいま悔やんでいる。あのときの出来事から、ロングが入隊以前から問題を抱えていたことは明らかだと彼女は言う。

「あの子は高校時代から精神を病んでいたんです」とコーレル。

Translated by Akiko Kato

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