小出祐介×福岡晃子が独占全曲解説 多彩な問題作『マテリアルクラブ』に迫る

8.Curtain 「アルバム制作中に起きた最大のマジックといえるのがこの曲」(小出)

小出:このアルバム制作中に起きた最大のマジックといえるのがこの曲。音はなく、岸井ゆきのさんのリーディングのみで構成されています。元々は“kawaii”のナレーションの別パターンとして用意したものだったのですが、ゆきのちゃんのリーディングが素晴らしかったことで、次曲へとつなげる演出を思い付き、この構成が生まれました。そして、前述の通り、これを録った翌日に収録した「閉じた男」に、『カーテン』というワードが偶然出てくるという奇跡も呼ぶわけです。

福岡:ゆきのちゃんのリーディングが本当に素晴らしかったです。女優さんのすご技を間近で体験しました。その時間のスタジオの空気感やこいちゃんのディレクションを吸い上げて、どんどん物語の人物が出来上がっていく。最後に一気に読み上げたものが採用されるというすごいことが起こっていました。

9.WATER 「『マテリアルクラブいけるな』という手応えを得た」(小出)

小出:初期にできた曲。僕らが最初に「マテリアルクラブいけるな」という手応えを得たのは、この曲が出来た時ではなかったでしょうか。情報量の多い曲ですが、いきなりこれを作れたというのは自信になりました。ラップと歌の中間のような歌唱と、歌詞をじっくり聴いてください。ただ、割とギターでどうにかしようとしてるので、バンドっぽい考え方というか、実はそこまでDTMっぽくはないんですよね(笑)。

福岡:スタジオで2人で2台パソコンを並べて作り始めたのがこの曲でした。その光景がバンド始めたてのような初々しさがあって、その通りに曲にも初々しさが残っています。何度も再構築したり検証したり、なかなか手のかかる曲だっただけに愛情もひとしおです。

10.New Blues 「過去も現在も未来も、素材である、ということで」(小出)

小出:このアルバムで唯一、いつも通りに歌唱している曲です。出来たときから最後の曲にしようと思っていました。歌詞も最後に書きましたが、なぜか仮歌の段階で「1998」とだけは言っていたので、なんとなく98年のことを思い出してみたら、今から20年前。中2。それって自分が本格的に音楽の道に進みたいと思い始めた時なんですよね。不思議だなと思いながら、過去と、「違う未来」のことに思いを馳せて歌詞にしました。過去も現在も未来も、素材である、ということで。

福岡:タイトルがとても好きな曲です。未来からみる今のBluesという視点でも、歌詞も音もとてもハマっているなと思います。個人的にはこういうシンベを入れたのが初めてだったので楽しかったです。管楽器も最高!

Edited by Aiko Iijima


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