妻子殺害のコロラドの殺人犯、司法取引で死刑回避

8月に妻と2人の娘の殺害容疑で逮捕された後、コロラドの裁判所に出廷したクリストファー・ワッツ。(Photo by RJ Sangosti - Pool/Getty Images)

アメリカ現地時間6日、第一級殺人罪で逮捕されてから3カ月弱で、クリストファー・ワッツ(33歳)は殺害当時妊娠中だった妻シャナン・ワッツ(34歳)、2人の娘ベラ(4歳)とセレステ(3歳)の殺害容疑の有罪を申し立てることに突然同意した。

防弾チョッキを装着したワッツがコロラド州の裁判所で有罪を申し立てたとき、被告人と被害者両方の家族がその申し立てを聞くこととなった。同容疑者は殺人罪、非合法の妊娠中絶、死体損壊など9件の罪で起訴されており、ウェルド郡の地区検事長マイケル・ルークによると、この有罪申し立ては死刑を免れるための州検事との司法取引の一部だという。ワッツに判決が下るのは11月19日で、ワッツの司法取引によって仮釈放なしの連続3回の終身刑が求刑される予定だ。

「彼はそれぞれの殺人罪で終身刑になるべきだ」と、罪状認否後の記者会見でルーク地区検事長が述べた。「殺害された美しい被害者たちの価値が反映された究極の刑罰を科すべき」と。

8月13日にシャナン・ワッツと2人の娘が行方不明になったとき、シャナンは妊娠15週目で、週末の出張から帰宅したばかりだった。クリストファー・ワッツは地元のニュースに出演して、行方不明の彼女たちが安全に帰宅することを懇願した。

「シャナン、ベラ、セレステ、もしこれを見ていたら、すぐに帰ってきてくれ」と、ワッツはTVの取材に応えて呼びかけたのだが、そう呼びかける彼の無表情で落ち着き払った態度が逆に彼の関与を疑う決め手となった。

逮捕時の宣誓供述書によると、刑事たちは同僚との不倫を隠していたことが発覚した時点でワッツを容疑者と睨んでいた。8月15日の事情聴取で、ワッツは妻と子どもたちに起きた「真実を話す」と申し立てた。当初のワッツの供述は、8月13日の早朝に彼は妻シャナンに別居したいと伝え、それから間もなく彼女が娘たちの部屋にいるのをベビーモニター越しに確認し、彼女が一人の子どもの首を締め、もう一人は「青く」なっていたというものだった。ワッツはシャナンの首を締めたのは「怒り」からだと主張し、その日の午前中に3人の遺体を勤務先の原油貯蔵所に捨てた。8月16日、ワッツが供述した場所を捜索すると、ベラとセレステの遺体が入った2本のドラム缶から少し離れた浅い地中にシャナンの遺体が埋められているのが見つかった。

シャナンが娘たちを殺害したというワッツの供述を当局は一切信用しておらず、ルーク地区検事長は記者会見で、今後ワッツ自身の口から真実が語られるかは疑問だと語った。しかし司法取引に応じたことで、ワッツ自身が最初の供述が「全くの嘘」だったと認めたことになる点を同検事長は強調した。

「今日伝えられる最も肯定的なことは、裁判所で行われたことを鑑みると、子殺しの罪をシャナンに着せて、そこにスポットライトを当てようとしたワッツの企てが失敗したということだ」と、6日の記者会見で述べた。「結局スポットライトが当たったのは本来当たるべき人物、つまりワッツ本人となったのである」と。

ワッツの弁護団から検察側に司法取引が持ちかけられた

ルーク地区検事長がメディアに語った話によると、数週間前にワッツの弁護団が検察側に司法取引を持ちかけたという。その後、彼はノースカロライナに住んでいるシャナンの家族に直接会って話し合いを持ち、死刑のみを除外することに同意した。コロラド州知事ジョン・ヒッケンルーパーは在職中に死刑執行を行わないと宣言しているため、死刑を求刑した場合は裁判自体が「途方もなく遅れる」ことが予想されると、彼はシャナンの家族に説明した(コロラド州の在任期間の制限によりヒッケンルーパー知事はもうすぐ退任するが、再当選の可能性はゼロのため、来年1月には死刑廃止を公約としているジャレッド・ポリスが州知事のポストに就任する。州知事選でポリスが勝利宣言をしたのはワッツが司法取引に応じた数時間後だった)。

つまり、シャナンの家族はすばやく裁判の判決が下されることを望んだといえる。この司法取引によって、シャナンの家族は裁判が長引いたときに被る心理的痛手を避けることができ、ワッツの上訴の可能性も抹殺できた。

「シャナンの母親サンディ(・ズーチェック)は悲痛な表情で私にこう言った。『あの男が娘と孫たちの命を奪う決断を下した。私はあの男の命を奪う決断を下す立場にいたくない』と、彼女ははっきりと私に告げた。今回の裁判の話し合いをする上で、彼女のこの言葉がとても説得力を持っていた」とルーク地区検事長。

9月には検察側が被害者の解剖所見の封印を申請した。このことで、この裁判を見守っていた関係者の中にはワッツの容疑がしっかり固まっていないと考える者もいたが、ルーク地区検事長によると、解剖所見を封印した理由は、目撃者がいる場合にはその判断に影響を与える恐れがあること、陪審員の公平さを保てなくなる可能性があることだと言う。地元紙グリーリー・トリビューンはこの申請に意義を唱え、解剖所見は検視官事務所が保管すべき公文書で、解剖所見の封印は郡検視官のカール・ブレシュの要請でなされるべき(ブレシュ検視官はルーク地区検事長に同意したとされている)だが、その場合は刑事訴訟とは切り離した公聴会を事前に行うべきだと主張した。

これに対し、ルーク地区検事長は犯罪の詳細に関する回答は断りつつも、ワッツ被告の判決が下された後に詳細を語ると述べた。また、捜査員たちは殺人事件に対して肩入れする傾向があり、被害者の検視が封印されないことも「あり得る」とも語った。

Translated by Miki Nakayama

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