Spotifyがポッドキャスト市場に進出、利益を良化させる「秘策」になるか?

Spotifyは先月ひそかに、ポッドキャスト配信の簡便化に役立つ分析データや情報を提供するツール「Spotify for Podcasters」を導入した。と同時に、Spotifyのプレミアム・アプリもデザインを一新。ポッドキャストがずっと簡単に検索できるようになった。

これ以前から、Spotifyは2018年にポッドキャスト関連のリリースを山のように発表してきた。コメディアンのエイミー・シューマーとの契約もその一つ。彼女のポッドキャスト「3 Girls, 1 Keith(キースと3人の女の子)」をSpotifyで配信するというもので、契約金は推定100万ドル。また期間限定で、ジョー・バドゥンの人気ヒップホップ系ポッドキャストの新シリーズも配信する。

最近も、VICEやGenius、さらにはNPRの司会者ガイ・ラズともポッドキャスト契約を結んだばかり。既に配信が始まっているBBCのポッドキャストアーカイブは言わずもがなだ。

Spotifyが急成長のポッドキャスト市場に打って出たのには、他にも様々な理由がある。広告代理店BIA/Kelseyによれば、全米のラジオ局の広告収入の年間総額は140億ドル。デジタルの勢いはFM市場にも浸食し、ラジオだけでもこれだけの大金が動くのだ。

ポッドキャストの広告収入はラジオに比べると微々たるものだが、それでも増加傾向にある。オンライン広告調査企業IBAとPwCによれば、アメリカのポッドキャスト市場は2017年で2倍に増加。86パーセントの成長率で、3億1400万ドルの収入を挙げているという。

さらに付け加えるなら、Spotifyの広告収入は下り坂。総収入の10パーセントにも満たない。ポッドキャストでこの問題を解決するには、次の2つの方法が考えられる。(1) Spotifyの「対MAU(月間アクティブユーザー)のコンテンツ聴取時間を向上し(2017年第4四半期は25時間だった)、広告主へのアピール材料を作る または (2) ポッドキャストのスポンサー契約を新たな収入源とする――最近SpotifyがリリースしたポッドキャストEbb & Flowは、番組スポンサーにNew Amsterdam Vodkaがついている。

加えて、Spotifyが頭を悩ませているのが広告ブロック機能だ。今年初旬に同社も認めているが、200万人のSpotifyユーザーが広告ブロック機能を有効にしているという。ポッドキャストは「番組内で」音声CMを提供することができるため、この問題にもスマートに対処できる。

だがつまるところ、ポッドキャストがSpotifyの投資家たちを納得させた主な理由はひとつ。ユーザーが音楽を流しても、レコード会社にロイヤリティを払わなくて済むからだ。

Spotifyはこの事実を、実に両手を広げて受け入れている。同社のCFOを務めるバリー・マッカーシー氏は8月、Music Business Worldwideとのインタビューでこう述べた。「(コンテンツにおけるポッドキャストの)パーセンテージが増えれば増えるほど、そこからマージンを得られる可能性も増える」。

噛み砕いていえば、「みんながPinkを聴く代わりにポッドキャストを聴いてくれれば、我々が儲かるチャンスもぐんと増える」。

はたしてSpotifyのポッドキャスト戦略が大手レーベルをどれほど憤慨させるのか、結果はこの6カ月で明らかになるだろう。ちょうどその頃、同社が大手レーベルのユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)と現在結んでいるライセンス契約が満了する。おそらくUMCは、いやほぼ確実に、Spotifyのオーディオ・ミックスに乗せるポッドキャストの数を制限するよう求めてくるだろう。

フォーブス誌によれば、現在もっとも裕福なアメリカ人――すなわち、ブラヴァトニク氏よりも26位上で、資産総額も彼より1420億ドル多い人物――は、アマゾンのジェフ・ベゾス氏。アマゾンはAmazon Musicで既にSpotifyの縄張りに割って入って、今年上半期には全世界の音楽ストリーミング会員の12パーセントを獲得したと言う。もしポッドキャストに何十億ドル単位の市場価値があるとすれば、ベゾス氏率いるアマゾンも――Apple、Pandora、Sirius XMなど各社も――マーケットを独占しようと知恵を絞っているに違いない。

Translated by Akiko Kato

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