オスカー女優ティルダ・スウィントン、自身が選んだ代表作を振り返る

ティルダ・スウィントン(Photo by Denis Makarenko / Shutterstock)



『オルランド』(1992年)

次にスウィントンが出演したのは、サリー・ポッター監督の『オルランド』だ。ヴァージニア・ウルフの小説が原作のこの作品では、男性から女性へと変身しながら時空を超えて生きる主人公が描かれている。

「原作をたった二文読んだだけで、この作品の主題が『違い』であることがわかった。それは性別を変えて、いくつもの時代を生き続けること。でも本当は、シンプルで変わらないものの類似性を追求したいんだ、と気付くまでにそれほど時間はかかりませんでした。そのため、キャラクターは変化しない。オルランドは永続的な魂なんです。ジェンダーという器は変わっても、オルランドはオルランドのままです」



「こうしたことについて議論しているとき、サリー・ポッター監督と私はカメラを見つめるという、作品の鍵となるアイデアを思いつき、実践しはじめました。表情やまっすぐな視線を変えず、観客に語りかけるのです。それが16世紀でも、20世紀でも同じです。巨大なカツラだったり、モーターバイクだったりと外見は変化しますが、視線は変わらない。それが上手く行ったおかげで、オルランドの演じ方がより明確に理解できるようになった。それだけでなく、オルランドの存在を把握する上でも非常に重要でした。オルランドが魂であることに気付いたんです」

『フィクサー』(2007年)

スリリングなドラマ作品で神経質な代理人カレンを演じるまで、スウィントンはアカデミー賞にノミネートされた経験がなかった(そして意外にも、この作品以降もノミネートされていない)。それでもこの作品が撮影スタジオで製作された映画への転換点となったことを指摘すると、スウィントンは礼儀正しく意義を唱える。ここでは、アカデミー賞受賞のことは話題にしないほうが良さそうだ。

「『フィクサー』が撮影スタジオ作品だと思えないのは、ニューヨークで撮影され、比較的小規模な撮影だったからです。もちろん、撮影スタジオで製作されたことには間違いありませんし、大物スター俳優も出演していますが、撮影スタジオ作品としての印象がない。少し前に、それまで自分が出演し、今も続けているスタジオ作品はすべて実験的な映画だと気付きました。どれも美しい作品です。アニメーションしか手がけてこなかったアンドリュー・アダムソン監督(『シュレック』の監督)が初めて製作した実写映画『ナルニア国物語』であれ、ブラッド・ピットを若返らせようとしたデビッド・フィンチャー監督の『ベンジャミン・バトン 数奇な運命』であれ、すべては何か新しいことに挑戦しようとする映画オタクによって作られているの」



「『フィクサー』で印象的だったのは、物語の方向性と求められたパフォーマンスでした。より繊細でナチュラル、そしてより本物らしいのに控えめな表現が求められました。とてもおもしろかったわ。カレンのような女性は実在しますし、歩き方、着こなし、話し方はすべてリアル。私にとっては冒険でした」

「トニー・ギルロイ監督は実に見事な書き手です。監督はうわべだけのカレンだけではなく、一人の人物として描写しました。私はそこに夢中になりました。だって、私も人間としてのカレンに一番興味があったから」

「アカデミー賞の受賞スピーチの記憶はありません。だから、何を話したか思い出させないでください。不思議かもしれないけれど、当時はアカデミー賞の授賞式をTVで観たことさえありませんでした。すごいことだってわかってはいましたが、そんなことで人生は変わらない。もっと大きな会場で華々しく開催されると想像していたので、少しがっかりした記憶があります。『どうしてがっかりしてるの?』って自問しました。なぜなら、私が唯一知っているアカデミー賞が『ボディーガード』のホイットニー・ヒューストンのシーンだったから。だいぶ盛られたバージョンでしたね。だって私のときは、誰もステージに駆け寄ったり、銃を撃ったりしなかったから!」

Translated by Shoko Natori

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