Spotifyが創業以来初の黒字に、躍進の一方で暗雲も

Spotifyが発表した第3四半期決算の結果が音楽ストリーミングサービス会社の明暗を浮き彫りにした。(Photo by Christopher Penler / Shutterstock)

Spotifyの第3四半期決算発表について同社CEOのダニエル・エクが「私たちの戦略は決してパートナー企業と真っ向から対立するものではありません」とコメントした。

2018年の第3四半期はSpotifyにとって良い結果をもたらした。音楽ストリーミングサービスは1.91億人もの月間利用者を獲得するまでに成長し、そのうちの8700万人は有料サービスを利用する定期会員である。さらに同社は創業以来、初の黒字に転じた。

その一方、2018年の第3四半期はSpotifyにとって悪い結果ももたらした。今回発表された数値は、7月に発表された数値(1.8億人の月間利用者のうちの8300万人が有料サービスの定期会員)を見てもわずかな増加にすぎない。さらに、今回の利益は中国の音楽ストリーミングサービスTencent Musicとの一回限りの税制優遇策のおかげなのだ。ここから3カ月かけてSpotifyは再び赤字に陥ることが予測されている。その理由は、定期的に配信しているプログラムに対して、音楽レーベルやアーティストなどに高額のロイヤリティを支払わなければならないからだ。それだけでなく、同社は定期会員数の伸びを100万人ほど修正した。

第3四半期決算の発表を受け、アメリカ現地時間11月1日にSpotifyのCEOダニエル・エクは投資家との電話会議で同社には「大きな成長のチャンス」があることを強調し、その例として8月に発表した韓国サムスン電子とのパートナーシップを挙げつつも、こうしたビジネスの進捗について語るには「時期尚早すぎる」と述べた。

さらにエクは、ゆくゆくはアーティストや音楽レーベルに追加サービス費を課すことで定額制の音楽ストリーミングサービス以外の財源を確保しようと取り組んでいる「二面性の市場」の例であるアーティストや音楽レーベルを対象としたプレイリストの提案方法や、インディペンデント系の米国アーティストが直接音楽をアップロードできるベータ版ツールなどの新機能の存在を強調した。

「新しいアーティストを一般の人々に紹介することはとても意味のあることです」とエクは語った。「そのためのコストを削減できれば、より多くのアーティストや音楽レーベルを成功へと導けます」。さらに、多くを語らないことで有名なエクは近日行われるレコード会社との再交渉——成功すれば同社の売上総利益は大幅に改善される——をほのめかしたものの、収益性が見込める具体的な計画についてはコメントを控えた。

「Spotifyがアップテンポな世界でスローなワルツを踊る」という詩的な見出しとともに米ブルームバーグは、定額制サービスを対象とした割引の多用によって(その大半は他社のメディアサービスとのパッケージだ)利用者一人あたりの平均売上は着々と急降下していると指摘した。米国市場は楽観的だが、慎重だ。4月3日にニューヨーク証券取引所に上場して以来、Spotifyの株価は上昇したものの、スタート地点に戻ってしまったのだから。

Translated by Shoko Natori

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