11年目のBIGMAMA「自分が迷わないことが大切」

―リード曲「Step-out Shepherd」について教えてください。

金井:制作的に特別力を入れていた曲というわけではありませんでした。素振りをしてたらボールが飛んできて打っちゃった的な。安井(Ba)がAメロを弾いている時にシェパードトーン(不連続の音のスケールによって無限に音階が高くなっているように錯覚する現象)を弾きたいって言い出して、どうぞ!って。これでどうやってAメロを歌えっちゅうねん!っていうのが僕の中の最初の感想でした。ただそれ自体が彼からのギフトというか、この作品にもたらしてくれた素敵なアイディアだから活かしたいと思ったし、それにどう乗っかるかがみんなの課題だったと思う。僕も最終的には歌詞で“シェパード”って乗っかってますからね。

柿沼:面白い発想だけどベースが細かいから、ギターは低音を見せてあげようっていう発想になって組み立てていきました。あえてレコーディングまでギターは決めないで、自分の直感に従って安井のアイディアからこの曲で自分はどういうギターを弾いているかな?とか、金井はどういう歌でくるかな?ってイメージしながら作りました。しかもそれを本番でやるっていう。作り込むというよりは曲をシンプルに組み立てて、呼ばれている感覚をはめていった感じです。

―個人的にリード曲にするなら「Ghost Leg」かなと思ったんですけど、アンケートでは「Step-out Shepherd」の次に票数が多かったみたいですね。

金井:「Ghost Leg」は春先にライブで披露していて、アルバムのコアになる曲の意識で作りました。アルバムの最初のほうに作る曲って自然とそうなりますから、結果的にMVは「Step-out Shepherd」で撮りましたが、この曲もイメージしていたというか。どう調理されても、これが次の代表曲ですって言い切るタイミングがあった曲だと思います。バンドのストロングポイントはどこですか?と聞かれた時に、この曲にそのすべてが入っている。苦手なことをわざわざやる必要はないと思っていて、得意なことをきっちりやるってことが体現されている曲ですね。

柿沼:このアルバムに入っているバランス感も、今のBIGMAMAのモードも含めて、ライブでもやりやすいというか、聴かれるだけの曲にはしたくなかった思いがあって。激しさと静寂と美しさのバランスを大事にした曲です。作っている時からアルペジオとコード感の対比は見えたんですけど、そのアルペジオに関して金井がずっと“明るすぎる”と言っていて、その音のちょっとした組み合わせをすごく気にしました。パッと弾いても出てこないようなフレーズが自分の中に降りてきて、それがAメロの憂いを帯びた金井の歌い方とすごくマッチしたんです。そこがアルバムの中で一番気に入っている部分ではあるかもしれないですね。

金井:柿沼からしたらめちゃくちゃ難しい注文だと思いますよ。歌詞ができていない段階で、自分は自己犠牲だったり献身的な歌詞を書きたいという思いがあるけど、“ごめん何かちょっと明るいんだけど”ってことをオーダーし続けたので。

柿沼:何回も録って送りましたね。面白いんですけど、俺が“これどうかな?”って思っている時は金井も“これではないな”ってどこかで思っているんです。でも、“これだ”って思った時は“これがいいと思う”って金井も思っていたり。

金井:そこは素直に入ってくるというか。別に2人を差別化しているわけじゃないけど、柿沼とリアドに関してはメンバーの中でもクリエイティブやセンスの面ですごく信頼しているので、この2人がいいぞってなっている時は逆らう必要もないと思っていて。それ以上に、レコーディングにおいては自分のセンスを預けることも必要だなって最近は思っています。お互いのセンスを預ける。今までは“100”同士で小競り合う瞬間があって、それも正しいとは思うけど、うまくセンスを預けられたほうがより長く作品を聴けたり好きな寿命が伸びるんじゃないかなと思うこともあって。前まではもっと力が入っていたし、自分のセンスを守ろうとして自分に対して過保護だったなと思うことがあったけど、俺が大人になったのか子供になったのかはわからないんですけど進展はあったと思います。

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