米オレゴン州知事選の結果を左右する、ナイキ創業者の巨額献金

ナイトによる政治投資の金額は、オレゴン州においては前代未聞の規模だった。同州では個人献金の額に制限を設けていないが、登録有権者はわずか270万人しかいない。

ナイトは、共和党の知事を実現して何を得ようとしているのだろうか?

ローリングストーン誌は、オレゴン州議会下院議員のビューラーへメールし、「ナイトと会ったことがあるか?」「ナイトからの莫大な献金をどう説明するか?」「献金の見返りにナイトと何らかの約束を交わしたか?」といった質問を投げかけた。ビューラー議員の広報担当モニカ・ウルブレフスキーからは、「献金者や献金についてコメントしません」との回答だった。

ブラウン知事の広報担当クリスティアン・ガストンのコメントは、よりオープンなものだった。「フィル・ナイトはとてつもなく裕福で、欲しいものは何でも買えるでしょう。しかし、知事職を購入することは誰にもできません」

ビューラー候補を支援するナイトは恐らく、新たな共和党へのメガ献金者の登場をアピールしたいのではないだろうか。「彼は以前からかなりの献金をしているが、今回のような多額な献金は初めてだ」と、オレゴン州立大学のビル・ランチ教授(政治学)は言う。教授は、ナイトがカジノ王シェルドン・アデルソンやエネルギー産業の大物コーク兄弟と並ぶ、大物献金者に肩を並べたという。「フィル・ナイト自身が一層保守寄りにシフトしているのもわかる」

オレゴン州ベンドに住む元整形外科医で、あごひげを生やしたビューラー議員は、自分自身を「財務的にクリーンで、妊娠中絶合法化に賛成の立場を取り、派閥に属さない穏健派」だとしている。しかしトランプとの距離を置こうとしてきた一方で、実際に議員の取っているスタンスの多くは、まさに「Make America Great Again」そのものだ。以下は、そのいくつかの例だ。

・ビューラー議員は、長年オレゴン州が移民の聖地となっている状況に終止符を打ち、移民税関捜査局による不法移民の捜査に地元住民や州警察を協力させようとする住民投票を支持している。
・議員は、銃器販売時の全員を対象とした身元調査に反対票を投じ、暴力行為につながると判断した場合に裁判所が銃器を押収可能とする法案に反対している。
・オレゴン州の気候変動対策法案に反対票を投じ、オレゴン州自然保護有権者連盟から“落第点”を与えられている。
・議員は、マルヒア国定禁猟区に放火した容疑で収監され、それに反対する人々による同地区の占拠につながった農園主たちに恩赦を与えたトランプ大統領を称賛し、農園主たちを“善良な市民”と呼んだ。

ビューラー議員とナイトは、特に経済面で共通する点が多いようだ。他の多くの州と同様、オレゴン州も年金の財源不足問題に悩まされている。同州の公務員退職年金基金は、200億ドル(約2兆2300億円)以上の赤字を抱えている。Willamette Weekによって発掘された2017年のインタビューでナイトは、「公務員退職年金基金は、いとも簡単に、オレゴン州全体を沈没させようとしている」と年金制度の改革が行われないことを嘆いている。「なぜオレゴン州が、アリゾナ州やインディアナ州よりも財政的に困窮しているのか?」と彼は問う。「これは政治的リーダーシップのせいに違いない、と私は考える」

ビューラー議員は、年金支出を制限し、州公務員の年金を401kへ移行させることで数十億ドル規模の支出削減を目論んでいる。ブラウン現知事は公務員の年金制度に対して曖昧な態度を取ってきた。しかし、オレゴン州の赤字補填のため、法人税の増税が先ごろ承認されている。現在の法人税の収入は、オレゴン州ロトの売上額よりも低い。増税は、ナイトのみならずナイキにとっても痛手となる可能性がある。

オレゴン州は「青い州(民主党支持者の多い州)」と揶揄されることも多い。しかし知事選挙に関しては接戦で、間もなく2018年11月に実施される知事選挙において、ブラウンの支持率が40%なのに対し、ビューラーは35%だ。クック・ポリティカル・レポートは先頃、オレゴン州知事選の結果を五分五分と予想している。

Translated by Smokva Tokyo

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