ギブソン新社長が語る「ギブソンとリーバイスには多くの共通点がある」

ジーンズ大手のリーバイ・ストラウスでブランド責任者を務めたジェームズ・カーレイ。11月1日からギブソンの実権を握る。(Photo by Gibson Brands)

アメリカ現地時間10月23日に明らかになったギブソンの新たなCEO、ジェームズ・カーレイ。彼は現在、ジーンズ大手リーバイ・ストラウスでブランド責任者を務めている。春に破産を申し立てた老舗ギターメーカーがついに暗黒時代から抜け出す。

カーレイがギブソンの実権を握るのは11月1日からで、新たに3人の上級管理者が加わり、最高マーケティング責任者にシーザー・グイキアン、最高財務責任者にキム・マットゥーン、最高個人情報保護責任者にクリスチャン・シュミッツ、そしてギブソン役員会の次期会長にナット・ジルカが就任する。

数々の逸話で名高い老舗ギターメーカーはこの春に破産申告を余儀なくされた。これは家電とオーディオ・エレクトロニクス商品に手を広げたことで負った5億ドル(約560億円)の負債によって経営が立ち行かなくなったからだった。

「ギブソン社に入って最初にしたいのは、障害の多い時期を辛抱強く耐えてくれたことを社員全員に感謝することだ」と、カーレイがローリングストーン誌に語った。障害の多い時期とは、数カ月にわたるギブソンの破産状態と会社再生プロセスを指す。「そして今、歴史のあるブランドとしてのリーダーシップを取り返そう。この状況をクルマに例えて説明すると、人はずっと後ろばかりを見ていられない。だから、私たちのフロントガラスがバックミラーよりも大きいことをまずは確認する」と。

自身もミュージシャンである(プレスリリースによると、彼が最近入手した楽器が1960年代のギブソンJ-45アコースティックらしい)カーレイは、ギブソン社と、彼がここ数年率いてきたデニム服の有名メーカーであるリーバイスには多くの類似点があると言う。両者とも「自分たちが最も得意なことをすると最高の結果を出せる」。歴史のあるブランドだが、新たな顧客を開発するにはそれなりの時間が必要だということだ。

カーレイは、11月1日に再生するギブソンの貸借対照表は「完全にクリーンな状態」で、楽器メーカーを核に据えた再編成を行いながら、原点に戻って再生する能力を備えていると太鼓判を押す。将来的にギブソンが楽器以外の製品やビジネスに手を広げる可能性は否定しないが、当初の目標はギターとフレット楽器の製造での成功を確実にすることだとカーレイが言う。1980年代から今年の倒産申告手続きの途中までギブソンを率いたヘンリー・ジャスキヴィッツは、5月に行ったローリングストーン誌のインタビューで似たような発言をしていた。すなわち、会社が再生されれば「これまでのことが帳消し」になり、何事にも煩わされることなく「我々の本来の仕事である楽器製造に100%の意識を向ける」ことが可能になると。

急激な成長を何とか実現しようと頑張っているのはギブソンだけではない。ギブソンの一番の競合相手であるフェンダーも、ギター以外の製品で新たな顧客を開発する積極的な戦略を繰り出してきた。そして、新たにスタートさせた楽器のレッスン・プログラムは健全な成長を遂げている。そうは言っても、ギター産業を俯瞰で見たとき、主流を形成しつつあるデジタル世代が、これまでの世代と同じだけの情熱を音楽制作に傾けるのか、彼らの情熱をどの企業が最も刺激できるのかという疑問は相変わらず残っている。

Translated by Miki Nakayama

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