米HBOが起用した「セックスシーン専門コーディネーター」のお仕事

「これまでどれほど多くのことが無視されてきたのか、私自身にもわかりません」。ローディスはインティマシー・コーディネーターの必要性を強調した。「セットには非常に強い力が働いています。こうした凄まじいプレッシャーを俳優は吸収し、動かざるを得ない状況に立たされるのです」。

ローディスは俳優、監督、プロデューサー、撮影クルーの仲介者としての役割を担っている。台本を読み、これから撮影するセックスシーンをめぐるグループディスカッションが円滑に進むように配慮し、個別で俳優と面談する。その日の撮影スケジュールに新しいセックスシーンや既存のシーンに変更が加えられたりした場合、ほとんどの場合はローディスが俳優に伝え、どこまでできるかを明確に確認し合う。「先に進む前に十分な情報を与え、同意を得ること」が必要不可欠だと言う。ローディスは制作チームとのディスカッションにおいても俳優の擁護役を務める。

「ローディスがしていることは決して急進的なことではありません」とミードは言う。「自分以外の誰かが自分を気遣ってくれているだけのこと。陰部を隠すための何かを誰かに渡すという考えは急進的なものではあってはいけない。でも、実際に誰かがそうしてくれるだけで、救われるのです」。

性器を布やファールカップなどで隠すだけでなく、ローディスはコレオグラフィーやムーブメントに関する経験を活かして、ミードや他の俳優がセックスシーンのそれぞれの動きに対応できるよう、手助けしている。

「ローディスは、本当はリアルではないことをすることで、よりリアルに見せられる方法を私たちに教えてくれます」とミードは言う。「自分一人だと、実生活でやることくらいしかできませんから。実生活のように見せたくない場合は本当に困るんです」。

「キスシーンから濃密なセックスシーンまで、これまでの監督は『好きなようにやってくれ』と指示するだけでした。でも、地図や出口や音声の指示もなく、ただ俳優たちに上下位入れ替わって好きに転がりまわってほしいだなんて。俳優にセックスワークを要請しているつもりでしょうか? 動きだけでストーリーが語れるとでも?」。ローディスはさらに言う。「セットにインティマシー・コーディネーターがいない場合、思い通りのストーリーにならないかもしれません。でも、それよりも最悪なのは俳優たちが身体的な暴行を受けることです」

Translated by Shoko Natori

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