米HBOが起用した「セックスシーン専門コーディネーター」のお仕事

HBOのドラマ「DEUCE/ポルノストリート in NY」のセットにて。キャンディ役を演じるマギー・ギレンホール。(Photo by Paul Schiraldi/HBO)

MeToo運動をきっかけに、ケーブルテレビ放送局HBOがドラマ「DEUCE/ポルノストリート in NY」の撮影の安全性を考慮して「インティマシー・コーディネーター」を起用。HBOは今後、同放送局が手がけるすべてのTV番組および映画にインティマシー・コーディネーターを立ち会わせる方針を発表した。

2018年の春、HBOのドラマ「DEUCE/ポルノストリート in NY」のブロンクスのセットでエミリー・ミードはこれから撮影クルーの眼前でオーラルセックスのシーンに挑もうとしていた。それなのに、どうも気分が進まない。用意されているペニスが本物ではなく、人工のものだからだ。とは言っても、ミードが今回のようなシーンを演じるのはこれが初めてだった。ドラマでは駆け出しのポルノ俳優ローリーを演じるミードは、こうした映像が世界中で公開されることに不安を感じていた。

「将来、もし私の子どもたちが観たらどうしよう」。ミードは思った。1970年代のニューヨークで娼婦として働く女性を演じるミードは、性差別的な業界で働く女性の一人だ。当然ながら、彼女の不安は目新しいものではない。それでも、MeTooが叫ばれる現代において、自分にも何かできることはないだろうか、と考えたミードの直感は、革新的なものだった。職場の安全性について真剣に考えるときがきていたのだ。セックスに関わる環境で働いている場合はなおさらだ。

16歳からセックスシーンを演じてきたミードではあるが、こうしたシーンの撮影を前に未だに不安を感じるそうだ。問題点の一つは、ミードが時として感じる孤独にあった。シーンに対して不安を抱いたり、撮影の合間に居心地の悪さを感じたり、寒かったり、あるいは肉体面と精神面の両方において自分が無防備すぎると思っても、それを全員の前で声に出して言うか言わないかはミード次第だ。多くの俳優同様、ミードは一緒に働く人々をがっかりさせたくなかったし、文句を言っているとも思われたくなかった。時が経つにつれて、たとえ自分の負担になろうとも、ミードは最低限の抵抗という道を選ぶようになった。ヌードシーン対策として、肌色のTバックを自ら準備して撮影現場に持って行くこともあった。こうした細かな点はこれまで見過ごされ続けてきたのだ。

Translated by Shoko Natori

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