マイク・Dとアドロックが語る、ビースティ・ボーイズ回想録の秘密

1989年の『ポールズ・ブティック』や1994年の『イル・コミュニケーション』のデラックス盤ボックスセットとして発売できそうな、未発表の音源が地下室に隠れているのでは? とインタビューで訊かれると、ビースティ・ボーイズの2人は笑った。「あるよ」とホロヴィッツは言う。「問題なのは、あまり出来が良くないんだ。どれも酔っ払いが50時間延々とジャムり続けたようなものばかり」。アドロックはマイクのほうを向いて言った。「覚えてる? みんなが超ハイになってさ、サーカスが観たいって俺が言い出したときのこと? みんな『コイツ何言ってんだ?』って感じだったけど、俺だけ『サーカス、イケてんなー!』みたいなノリだったよな!」

ヤウクがいない喪失感は『Beastie Boys Book』から強く感じられる。なぜなら、本作でもっとも生き生きと描かれているのがヤウクだからだ。いたずら好きのスノーボーダー、精神世界の探求者、ほかのメンバーを常にさらなる高みへと引き上げ続けた兄貴的な存在だった。「バンドは解散しなかった」。アドロックは2011年のアルバム『Hot Sauce Committee Part Two』のレコーディング当時の様子を描いた、悲しい章でこのように綴った。「それぞれのクリエイティヴィティを発揮するため、別の道を選ぶようなことはしなかった。ソロプロジェクトが原因でお互いを憎むこともなかった。アダムがガンを発症して、死んでしまったからこれが最後のアルバムになっただけ。もしアダムが死ななければ、この文章を読んでいる今も新しいアルバムを作ってると思う。悲しいけれど、そうはならなかった……。書くにはつらすぎるな」。

ホテルのスイートルームで思い出話に花を咲かせながら、アドロックとマイクが再会を喜んでいる様子がはっきりと伝わってくる。「振り返ってみると、なんか、マジでどうかしてたよな。よく生き残れたよ」。アドロックが話す。「今の俺たちを見てくれよ。すっかりオトナだ。ローンのこととか考えなければいけないんだ。そうだ、ドッグフードを買わないといけないんだった」。そして肩をすくめるとこう言った。「でもまだ生きてる」。

Translated by Shoko Natori

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