YouTubeが米イベントブライト社と提携、チケット販売機能を強化

YouTubeのミュージック・ショーケースで演奏するセイント・ヴィンセント。同社はチケット販売業者のチケットマスターに加えて、イベントブライトと提携した。(Photo by Michael Loccisano/Getty Images)

YouTubeが提供するコンテンツは、音楽や動画の視聴という領域にとどまらない。アメリカ現地時間18日、チケット販売企業イベントブライトと提携したサービスが開始した。

このサービスで、YouTubeユーザーがミュージック・ビデオのページから直接コンサート・チケットを購買できるようになり、2017年11月に同社がチケットマスターと合同で構築したサービスと合わせると、ストリーミング・サービスの一大企業がアメリカ国内のチケット市場の70%を占める企業2社とパートナーシップを結んだことになる。

このサービスを発表したブログ投稿によると、YouTubeのアーティスト公式チャンネルで公開されている動画の下部に、イベントブライトが取り扱うアメリカ国内のコンサートのチケットリストが表示され、ワンクリックでイベントブライトのチケット購入ページに飛ぶことができるという。この機能はデスクトップでもモバイルでも使うことができ、ユーザーの所在地の近くで開催されるコンサートやイベントが表示される。YouTubeの広報担当者は、動画とチケット購入が融合したこのサービスは公式チャンネルを持っている「何千ものアーティスト」に適用されると述べたが、イベントブライトからYouTubeが得る収益や契約条件に関しては回答を控えた。

同社はイベントブライトのライバル企業であるチケットマスターと2017年に提携している。今後ページのコンサート情報に表示される会場の数が増えることは確実だろう。

チケットマスターの親会社ライブ・ネイションの2017年の総収益は約100億ドル(約1兆1200億円)で、これは世界の2大レコード会社であるユニバーサルとソニーの収益を足した額である(チケットマスターはYouTube独占契約ではなく、大手プラットフォーム企業のSpotifyとFacebookとも同種の契約を締結している。一方、イベントブライトも同社の販売パートナーは50社以上にのぼるという)。

音楽企業が好んでYouTubeと提携する最大の理由はそのユーザー数の多さだ。YouTubeの統計によると1カ月にログインするユーザー数は19億人で、これは地球の人口の4分の1と同数である。しかし、それだけ多くのユーザーを得ているとはいえ、プラットフォーム上の音楽とユーザーのつながりの強さ、すなわちユーザー・エンゲージメントは曖昧なままだ。これまでミュージック・ビデオの共有率が5〜27%と報告されているが、実数は明らかになっていない。また、動画を視聴するユーザーも、熱心なファンと無料BGM的に使うユーザーの区別が曖昧だ。同社がチケットマスターとの提携を行っている時期にビルボードが指摘したのが、Spotifyはアーティストの熱心なファンを特定して、そのファンに向けて確実にチケットを売り込む機能を持っているという。つまり、YouTubeの現段階でのやり方だけでは“手当たり次第感”が抜けないのである。

「今後、北アメリカのリストに新たなアーティストとすべての規模の会場を加えて行き、ひいては世界規模へと広げていく予定だ。YouTubeで動画を発見する喜びとパワーをさらに拡大して、アーティストとファンを結びつけること、そして彼らのつながりをコンサートによって支援することに興奮を禁じ得ない」と、YouTubeは件のブログ投稿で明言している。つまり簡単に言うと、今後も他社と提携することを期待してくれ、ということだ。

Translated by Miki Nakayama

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