ジューダス・プリーストの元ギタリストが語るヘヴィメタル黎明期

著書『Heavy Duty: Days and Nights in Judas Priest』を刊行したK.K.ダウニング(Photo by Paul Natkin/Getty Images)

ジューダス・プリーストの元ギタリストであるK.K.ダウニングは、1970年代半ばのある日のことを、今もはっきり覚えているという。

「バンドメンバーたちを見て、一体なんて格好をしてんだって思ったんだ」。彼は大きな笑い声を上げながら語った。フロントマンのロブ・ハルフォードが死や破壊、逆境の克服といったヘヴィメタルの古典的テーマについて歌う一方で、当時メンバーたちはフリルの付いたシャツやシルクのパンツを身につけていた。誰がどう見ても、その服装はバンドのイメージからかけ離れていた。

「俺はロンドン市内のとある靴職人の店に行って、膝上まである白のレザーブーツを特注した。あんなのを履いてるやつは他にいなかったよ」。彼はそう話す。「黒のシャツ、両脇にスタッズの付いたパンツ、さらにスタッズを打ったレザーチョーカーなんかも作った。俺はこの方向性で行くべきだと確信してた。なんてったって俺たちは、泣く子も黙るジューダス・プリーストなんだからさ」。ダウニングは再び笑い声を上げた。他のメンバーも彼の意見に同調し、以降レザーはバンドのトレードマークとなった。

バンド内の人間関係の悪化を理由に、彼はバンドを2011年に脱退した。それから約7年の時を経て、彼はバンドがその歴史の一部を作り上げたヘヴィメタルというジャンルについて、初めて自らの思いを明かした。先日発売された自叙伝『Heavy Duty: Days and Nights in Judas Priest』では、家庭内暴力を経験した幼少期、人生の転機となったジミ・ヘンドリックスのコンサート、そしてヘヴィメタルのパイオニアとなるバンドの結成のいきさつなど、その半生が自らの言葉で描かれている。彼ともう一人のギタリストであるグレン・ティプトンは、デュアルギターによるハーモニーというメタルならではのスタイルを確立した他、目にも止まらぬ高速リフとソロによって無数のフォロワーを生み出し、スラッシュメタルというジャンルの誕生に貢献した。また彼は「ブレイキング・ザ・ロウ」「リヴィング・アフター・ミッドナイト」「嵐のハイウェイ」など、メタル史に残る名曲の数々で作曲者のひとりとしてクレジットされている。

同書において、ダウニングは42年間在籍したバンドへの思いをショッキングなほど赤裸々な言葉で綴っている。ハルフォードがゲイであるという事実を「バンドにとって致命的な秘密」とし、ティプトンを自己中心的で独裁的と非難し、バンドが『トップ・ガン』のサウンドトラックへの参加を辞退したことを大きな過ちだったと主張するなど、同書はバンドのファンにとって驚くべき内容となっている。バンドの功績を誇りに思うとしながらも、彼は脱退という決断に至った経緯について触れた上で、バンドへの復帰の意思はないと述べている。

イギリスの自宅でローリングストーン誌の電話取材に応じてくれた66歳のダウニングは、時に物思いに耽る様子を見せながらも、現在の心境を物語るかのように、終始穏やかな口調で語ってくれた。今年前半に彼が発表したステートメントは、ティプソンがバンドの最新作『ファイアーパワー』には参加していないと示唆しているとして(ティプソンは持病のパーキンソン病を理由に、同作のツアーへの参加を辞退している)、メンバーたちの怒りを買うことになった。ダウニングはそのステートメントが誤解を招いたとして謝罪したが、その一件はバンドからの脱退が正しい決断だったと彼に再認識させることになった。

Translated by Masaaki Yoshida

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