ACIDMAN大木伸夫がアイスランドで体験した不思議な出来事

ACIDMANは、大木と佐藤雅俊(Ba)、浦山一悟(Dr)による3人組。ロックはもちろん、ジャズやソウル、ハードコアなど様々な音楽スタイルに影響を受け、静と動を行き来するダイナミックなバンド・アンサンブルと、美しいメロディを時に優しく、時にエモーショナルに歌い上げるヴォーカルが特徴である。結成当時ギタリストだった大木は、前任のヴォーカル脱退を機に歌詞を書き歌うこととなる。が、いざとなると何も書くことがない自分に気づいてしまう。

「そのときに思い出したのが、子どもの頃から好きだったこと、思い描いていたこと。例えば宇宙や生命、その生まれ変わりについて思いを馳せることが、僕は大好きだったんです。だったらそれを曲にして歌ってみようと。しかも、音楽ともリンクしてるんですよね。音の揺れや波動と、生命のリズムはすごく通じるものがあるなと」

また、薬剤師の資格を持つ大木の歌詞には、化学や科学にまつわる専門用語(“シナプス”“コロイド”など)が多く用いられている。他にも宗教用語や古代ヨーロッパ文化に関連する用語など、他のミュージシャンがあまり使わない言葉が並ぶ。そういえば以前、彼にインタビューをしたとき、ノーベル化学賞を日本人が受賞したというニュースに、ひどく嫉妬していたのを思い出した。

「そんなことありましたっけ?(笑) でも、確かに僕は、この世界の仕組みを解明したいという気持ちで歌詞を書いているので、そんな気持ちになってしまったのかもしれませんね」

実際、昔の科学者は詩人からヒントを求めることもあった。「世界の成り立ちを研究していた科学者が、詩人のふとした一行に閃くなんてロマンティックだと思いませんか?」と大木は瞳を輝かせる。そんな彼はもちろん、大のSF好きでもある。最近観た映画では、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『メッセージ』に感銘を受けた。

「数年前にクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』を観たとき、“これを超えるSF映画を、俺は生きている間に観られるのだろうか?”って思ったんですが(笑)、同じくらい感動しました。音楽も映像も。オチも素晴らしかった。テッド・チャンのあの短編小説を、ここまで壮大なスケールにするなんて驚きです。それに、あの地球外生命体(ヘプタポッド)が描く文字が、僕らのアルバム『Loop』のジャケットにそっくりで。僕が描いた絵なんですけど、そんなリンクもうれしかったな」



歌詞と同様、曲の作り方も大木はユニークだ。「なるべく、他の音楽から影響を受けたくない」という理由で、例えばミュージシャン仲間からもらったCD以外、普段はまったく音楽を聴かない。唯一聴くのはアイスランド出身のバンド、シガー・ロスで、それは楽曲というよりもサウンドの響きや質感に惹かれるから。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE