今市隆二インタビュー「R&Bの本質と共鳴するエモーション」

2018年8月からスタートしたソロツアー「RYUJI IMAICHI LIVE TOUR 2018 “LIGHT>DARKNESS”」は12月まで続く。(Photo by Tsutomu Ono, Styling by Eiji Takahashi, Hair by Go Utsugi (PARKS), Make-up = Michiko Funabiki)



・音楽は“楽しみながら作る”のが大切

ー『SEVEN/7』には、今市さんがLAのブライアンの自宅で、ともに過ごす日々も収められています。憧れのミュージシャンと一緒に過ごしてみて、いかがでしたか?

今市:やっぱり行く前はかなりの覚悟が必要でした。でも、ブライアンの一家は本当に温かく迎えてくださって、かけがえのない時間を過ごさせていただきました。日々のサイクルとしては、朝9時に2人でジムに行って、ブライアンはバスケを、僕は筋トレなどを行い、昼には二人でローカルの食堂でランチを食べて、そこから家に戻って音楽に取り組む感じでした。発声レッスンだけではなく、ピアノを触ったり、ギターを教えてもらったり。今回のホームステイで2曲仕上げることは、最初からゴールとして決めていたので、制作作業も同時にしていたのですが、「音楽って、こんなに自由に作っていいんだ」と思える瞬間が何度もあったのが印象的でした。

ー具体的に、どんなところで自由さを感じましたか?

今市:日本でもアーティストによっていろんな音楽の作り方があると思いますが、僕らの場合は、コンペディションでトラックを選んで、それには仮歌が入っていて、そこからトップラインをどうするかとか、どんな歌のアプローチにするかとか、調整していくやり方が一般的でした。でも、ブライアンの場合は、その場でパッとトップラインを作っても良いし、2人で歌いながら歌詞を考えてもよいし、なんなら少しお酒を飲みながら作っても良い。トラックメイカーの方が来て、いろいろと相談をするときもフランクな感じで、本当に自由で楽しそうなんです。日本の音楽業界の中で、長年に渡って培われた制作フロウもよく出来ているし、それはそれでもちろん素晴らしいと思いますが、それとはまた違う方法論もあると知ることができたのは、大きな収穫でした。音楽は“楽しみながら作る”のが大切なんだという、ある意味では当たり前のことにあらためて気付かされました。

ー楽しみながら作ることで、今市さんも自身の殻を破っていくように見えました。

今市:ブライアンの音楽は、そこに楽器が一つあって、歌を歌えれば成立するんですよね。僕はこれまで、ピアノは大好きだったんですけれど、それほどギターには興味がなかったんです。でも、ブライアンがさらりと楽しそうに弾き語りをしたりするのが本当にかっこよくて、感銘を受けました。僕にも一本、ギターをプレゼントしてくれて、弾き方も教えてくれて、おかげで音楽との距離がこれまで以上に近くなったと思います。今もギターの練習は続けていますね。


Photo by Tsutomu Ono

ー三代目の表現とは異なる方向性だった?

今市:三代目は、ダンス&ヴォーカルグループとして、パフォーマンスの見せ方や楽曲の聴かせ方にものすごくこだわっていて、そのクリエイションによって支持されてきた部分が大きいと考えています。でも、シンプルに歌と楽器だけでも、相手の心に響く表現はできるのだと気付かされましたし、それによって僕自身も今まで以上に自由に表現できるようになったと思います。音楽というアートの奥深さを、さらに知ることができたというか。

ーレコーディングするときも、ブライアンはラフな感じなんですか?

今市:そうですね。ちょうどブライアンも自身のアルバム『Genesis』(17年)の制作中だったんですけれど、彼は寝起きで「今から歌を入れるね」といって、そのまま歌い始めて、それで一発OKくらいのクオリティのものができてしまう。それはブライアンの高いスキルの賜物なんですけれど、時間も短縮できるし、本当にうらやましいと感じました。そう、ジムへの行き帰りのクルマの中で、「今はこんな曲を作っているんだ」って、よく制作中の『Genesis』を聴かせてもらっていて、それも貴重な体験でした。『Genesis』でブライアンは打ち込みを多用していて、今なお時代に寄り添って新しい音楽に挑戦しているのがよく理解できたし、それも刺激になりましたね。

ーブライアンも今市さんとの交流を、心から楽しんでいる様子でしたね。

今市:ブライアンにとっても、あの2カ月間は人生における貴重な期間だったのだと思います。深い絆を作ることができた実感は、僕の中にもありますね。あの時期、ブライアンは、実のお母様が亡くなったり、付き合っていた彼女と結婚したり、いろんなことがあったんです。ドキュメンタリーにも出てくる2人の子どもは、今の奥さんの子どもで、ブライアンは彼らとも分け隔てなく、優しく接してました。普通、そんな大変な時期に、見ず知らずの日本人を2カ月もホームステイさせようなんて思わないし、僕だったら真似できないことです。

ーブライアンの人柄の良さは、映像からも伝わってきました。

今市:ブライアンは決して口数が多いタイプではないけれど、本当に優しくて、愛情が深くて、ちょっと笑顔を見ただけでそれが分かるんです。ブライアンの作る楽曲は、トップライン、トラック、歌声に至るまで、そこかしこに優しさが詰まっています。人柄が音楽にも表れている稀有なミュージシャンで、彼のような表現をするためにも、僕自身も愛情深く、広い心を持ちたいと思いました。

ー出来上がった3rdシングル曲「Thank you」は、まさにそんなブライアンの音楽性が詰まった楽曲で、今市さんの人生観や精神性が深く織り込まれた、スピリチュアルな楽曲に仕上がっていますね。

今市:ブライアンと楽曲を作るのは、僕の人生においても大きな出来事で、人生に一度きりの貴重な経験だと感じていたので、ヴォーカリスト人生の中で意味のある一曲にしたいとの想いが強くありました。そのため、自分のこれまでの人生を振り返って、一番伝えたいメッセージを込めたいと考えたんです。現在の僕は、先輩方や仲間たち、そしてファンの方々に支えられたからこそあります。だから、ブライアンには「言葉だけでは伝えられない、みんなへの感謝の気持ちを歌に込めたい」とお願いして。

ーそのやりとりは、ドキュメンタリーにも収められていましたね。

今市:実は最初、ブライアンはラブソングを作るつもりだったみたいなんですけれど、要望を伝えると「OK、わかった」と言って、すぐにピアノを弾き始めました。その瞬間に生まれてきた旋律が本当に美しくて、聴いた瞬間に「これは僕の人生を代表する一曲になる」と感じて鳥肌が立ちました。あの体験は今も忘れられません。僕にとっては本当に運命的な楽曲だと思うので、これから大切に歌っていきたいです。

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