来日記念ベスト盤もリリース、マライア・キャリーを今こそ聴くべき3つの理由

マライア・キャリーの最新アーティスト写真


2.故アレサ・フランクリンも魅了した歌声、いまだ古びぬ数々のヒット曲

一方、若手のみならず、年上のベテラン・ディーヴァも同様に、マライアへの愛を惜しみなく贈る。今年8月に”クイーン・オブ・ソウル”ことアレサ・フランクリンが76歳で他界した際には、後継者として、まっ先にマライアの名を思い浮かべた人は多かったのだろう。米メディアでは、アレサとマライアが初共演を果たした98年の『VH1 Divas Live』の映像・写真が頻繁に用いられた。当時、既に大スターだったマライアだが、大先輩を立てつつ歌う謙虚な姿が印象的だった。そのせいか、アレサはマライアを「とても慎み深く、感じがいい子よ」と褒めちぎり、ずっと後日にはマライアの「ヒーロー」や「タッチ・マイ・ボディ」をライブで歌っているほどだ。また、あまり知られてはいないが、マライアのゴッドマザー(後見人)はパティ・ラベル。パティ曰く「あんな歌声のシンガーは他にはいないから」と、その理由を明かしている。

4オクターブとも5オクターブとも言われるマライアの歌声。「ヴィジョン・オブ・ラヴ」に代表される正統派スタンダードではとことんアクロバティックな歌唱を披露し、「ヒーロー」のようなバラードでは極めてストレートに感情移入して歌い、ダイナミックなハウス・チューン「エモーションズ」ではダンス・フロアの真ん中に躍り出る。さらにトレードマークのホイッスル・ヴォイス(超高音)でだめ押しも忘れない。彼女の歌の根底には常にゴスペル・チャーチを思わせるソウルネスが迸り、パッションが燃え盛っているのは間違いないが、だが決して歌の上手さだけで勝負しようというのではない。歌を含めた総合的なサウンド作りにもヴィジョンを持っている。作詞・作曲からプロデュースまで手掛け、なかでもヴォーカル・アレンジに関しては、とことん拘りを発揮。クラブ向けのリミックスのために、わざわざヴォーカルを録り直すなど、まったく労を惜しまない。しかも、どんどん進化を遂げているのだから恐れ入る。



「ファンタジー」(95年作の5作目『デイドリーム』収録)以降はアーバン色が強化され、歌い方も「ハニー」(97年の6作目『バタフライ』収録)のような囁き系やお色気路線が増加。「ウィ・ビロング・トゥギャザー」(05年の10作目『MIMI』収録)あたりになると、もはや人間業とは思えない複雑怪奇なヴォーカル作りが十八番となる。一曲の中でファルセット〜地声〜低音〜ウィスパー〜ホイッスルと素早く切り替えながら、どんどんレイヤーが重ねられ、まるでパイやミルフィーユのように美しくも繊細な世界が作り上げられる。四方八方からカラフルな音色のヴォーカルが飛び交う様は、紛れもなく唯一無二。彼女にしか作り得ないトリッピーかつマジカルなソニック感だ。それを、ライブでもやってしまおうというのだから恐れ入る。

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