中国が目をつけたノースカロライナの養豚業、悪臭は「お金の香り」

バトラーの農場へ続く未舗装の道を車で進むとき、環境やビジネスに関する彼の受賞歴を宣伝する看板の横を通り過ぎた。彼は私を、緑色のビニール製防水シートで覆われた肥溜めの上に案内した。我々の足の下には糞尿が溜まっているはずだが、ほとんど臭いはしなかった。防水シートはバイオガスプラントの一部で、ガスを電気に変えるエンジンへメタンガスを送り込むパイプがつながっている。バトラーは、電力会社へ電気を販売しているのだ。彼曰く、バイオガスプラントへの投資により、よりクリーンで収益性の高い養豚を実現できるという。


Photo by Rolling Stone

2000年、スミスフィールドは、豚の排泄物処理のより環境にやさしい方法を模索する研究に、1700万ドル(約20億円)を投じた。しかし最もコストの低い方法でも、1農場あたり5万2000ドル(約600万円)かかると試算された。そこでスミスフィールドは、同社の元チーフ・サステナビリティ・オフィサーが“最新技術”と主張していた肥溜めシステムの開発を続けた。バイオガスプラントはより安価になっており、スミスフィールドは150億ドル(約1兆7000万円)の年間売上からいくらかの利益を削ることで、より良い企業市民になれるはずだ、と非難する声もある。

同テクノロジーは、スミスフィールドにとって各地で適用するのに高価過ぎるとはいえない。ユタ州にある同社の農場では、バトラーのものと類似した嫌気消化プラントを採用している。WHグループでは、中国の農場で2基のバイオガスプラントを使用し、屋外の肥溜めよりもずっと進歩した乾燥肥料工法を採用している。さらに中国農業部は、バイオガスプラントの使用を推進してきた。私はスミスフィールドの元広報担当役員ドン・バトラーに、WHグループが中国で採用している方法を他の地域にも適用しない理由を尋ねた。彼は、「ノースカロライナの暖かい気候には肥溜めが向いている。別のシステムを導入しようとして破産に至った農家を見てきた」と主張した。とにかくスミスフィールドは、株主に対する責任がある。それが米国のルールだ。

米国経済では長い間、規制緩和がビジネスにとって有効だとされてきた。企業の成長が雇用創出と繁栄につながり、米国を強くする、という考え方だ。しかしその理論は、米国がグローバリゼーションの重要部分を握り続ける、という仮定に基づいている。養豚業がデュプリン郡にとって有益かどうかは、その見方によるだろう。しかし、間違いなく中国政府とWHグループには利益をもたらし、同グループは2016年版フォーチュン・グローバル500に初めてランクした。スミスフィールドの買収成功に続き、同グループはルーマニアとポーランドでも同種の企業を手に入れている。

さらに同グループは最近、カリフォルニア最大の食用豚処理会社のクラファティ・パッキングと、アリゾナ、カリフォルニア、ワイオミングで養豚場を展開する関連企業2社も買収した。「中国は価格に対して非常に敏感で、グローバルでの影響力を高めるための戦略を常に探し求めている」と、ウエストバージニア大学のヘイリー教授は言う。「中国は米国内に弱点を見つけ、そこから搾取しているのだ」

※本稿は“UC Berkeley-11th Hour Food and Farming Journalism Fellowship”との協力により公表されたものである。







Translated by Smokva Tokyo

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