中国が目をつけたノースカロライナの養豚業、悪臭は「お金の香り」

ポープは中国政府の関与を否定したものの、中国の中央銀行は、同買収に対する40億ドル(約4520億円)の貸付を承認した。同取引は、2013年の年次報告書で“社会的責任”として処理されている。調査報道サイトのリヴィールは、WHグループが中国政府からの指導を受けているとする文書を公開したが、同社幹部は「中国では、豚肉は国家安全保障事項にあたるため」と説明している。

現在、スミスフィールドは自社加工した豚肉の4分の1以上を、中国を中心とした海外へ輸出している。2016年の中国への輸出量は約30万トンだった。スミスフィールドが買収先として魅力的だった理由は、豚を育てるコストが中国と比較してノースカロライナ州の方が約50%低いことにある。安価な飼料と広大な農場が主な理由だが、特に共和党支持者の多い州における取引や環境に関する規制が緩いことも挙げられる。外国企業からすると、コストとリスクの高い実務を海外移転する先として、米国はますます魅力的な場所になっている。

ノースカロライナ州デュプリン郡は米国内でも最大級の食用豚の産地で、豚の数と人口の比率が約30対1だ。テーダマツの生える田舎の広大な砂地に、フットボール場ほどの広さの金属製飼育施設が数百軒あり、約200万頭の豚が飼育されている。1平方マイル(約2.5平方キロメートル)あたり約2450頭いる計算になる。飼育豚の排泄物も大量だ。とにかく食べ続けるのが唯一の仕事である成長した豚1頭あたりの排泄量は、1日あたり14ポンド(約6.4キロ)。デュプリン郡全体では、1日あたり約1万5700トンにもなる。ニューヨーク市民が排出する約2倍の量だ(フード&ウォーター・ウォッチ調べ)。


Photo by Rolling Stone

各飼育施設の裏にある屋外の巨大な肥溜めには、数百万ガロンの豚の液状排泄物が保管されている。肥溜めの多くは下にコンクリートを打ったりビニールを敷いておらず、単に土に穴を掘っただけの構造だ。排泄物が溢れ出るのを防ぐため、各農場は排泄物を農作物の肥料として撒いている。散布の際に霧状になった排泄物は周辺の住宅にも降りかかり、住民が吸い込むこともある。結果、呼吸器や健康上の様々な問題を引き起こしている。さらに、地中に染み込んだ排泄物は地下水面に達し、1996年や1998年のようにハリケーン来襲に伴う洪水で周辺地域に溢れ出したりしている。

Translated by Smokva Tokyo

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